大富豪の話から、麻雀好きでも知られる将棋棋士の先崎九段が以前コラムで書かれていた話を思い出しました。先崎先生が奨励会員だった頃、ひょんなことから女子高生と合コンすることになり、皆で一緒に遊べるゲームをしようということで大富豪をやることになったそうです。
大富豪で特に要求されるスキルと言えば記憶力。ジョーカーや2くらいなら、何枚出たかを覚えておく人も多いと思います。しかし、将棋に限らずボードゲームなら何でも本気な奨励会員同士の勝負では、最低でも絵札までは覚えていないと太刀打ちできないほどハイレベル。某棋士に至っては「大富豪次の一手問題」を製作するほどのガチっぷりだったそうです。
大富豪は手札の良し悪しがそのまま結果に影響しやすいとはいえ、一手の選択が結果に与える影響は麻雀の比ではありません(麻雀は最初にアガった人だけが加点できるので、誰かが早々にツモアガリしたケースはそれまで何を切ろうが同じ結果になる)。記憶力という個人差の大きい能力に結果が左右されやすいのもあり、初心者と上級者同士の対決なら、麻雀よりずっと実力差が出やすいのではないでしょうか。勝負は奨励会員側の圧勝。女子高生達が呆れて帰ってしまっても、そんなことは気にも留めず会員だけで勝負が続けられたそうです。
「花を持たせてやればいいのに」と、当時を振り返って先崎先生がコメントしていましたが、小学生から勝負の世界に生き、色恋沙汰とは無縁の生活を送っていた会員ならではの話。幼い頃将棋棋士に憧れるも、頭が悪かったので東大に入った私としては微笑ましいエピソードに思われました。
福岡のゆるゆる麻雀会は、その日が麻雀デビュー戦という方も参加されています。手加減をしているつもりは全くないのですが、それでもよく負けます。この前は麻雀デビュー戦の方が卓にいる中で鳴かず飛ばずのダンラス。オーラスにようやくリーチツモチートイツドラドラの跳満をアガって3着。ラスになったのは…大会の主催者でした(笑)
麻雀もトランプくらい色んな遊び方が普及すればいいのにと書いたばかりですが、思えばトランプゲームは、「実力差がはっきり出るもの」「ほとんど運だけのもの」「長期的には実力差がはっきり出るが、一戦あたりのゲーム性が低く、ギャンブルとしてでなければ成立しづらいもの」のいずれかで、初心者と上級者が一緒に遊ぶには難があるものが多いような気がします。そう考えると、麻雀というのは運と実力のバランスが実に絶妙で、あえて他の遊び方を考える必要性が薄かったというのが、麻雀牌を使った別の遊びが普及しなかった原因なのかもしれませんね。