将棋棋士の鈴木大介九段が、「麻雀最強戦2019」の著名人代表決定戦で優勝されたことは以前お話しましたが、その勢いのままファイナルも優勝。優勝賞金300万と、初タイトルの栄誉を勝ち取られました。
将棋棋士が並み居る強豪プロ雀士を破って麻雀の大会で優勝するという例はこれまでにもありましたが、私が思い出したのは、荒正義プロの著作『勝負師の条件』に出てくるエピソード。将棋棋士の芹沢博文九段が荒プロに、「俺達はアマチュアに大駒を落としても勝つのだから、麻雀のプロもアマチュアに20000点くらいハンデをつけてでも勝つべきだ」という旨の話をされたというものです。
しかし麻雀は将棋と違い、一発勝負なら誰が勝ってもおかしくないゲーム。もし1人だけ20000点ハンデで5000点、残り3人が25000点で半荘戦をしようものから、4人の実力が同じなら5000点持ちからトップを取れる確率は3%程度(麻雀順位予想計算機調べ)。麻雀覚えたての初心者とトッププレイヤー3人の対局でさえ、初心者がトップを取る確率は3%よりは高いでしょう。逆に言えば、初心者とプロの対局でも、特別ハンデを設けなくても楽しめることこそ、麻雀というゲームのいいところでもあります。
しかし、それでもプロを名乗るくらいなら、アマチュアとは技量が違うところを見せつけて欲しいというのが人情です。そこで私が提案するハンデは、「実力者は常に制限時間内に打牌する」というもの。3秒なり5秒なり時間を決めて、時間内に打牌を決定できなければツモ切りになります。
麻雀は将棋ほど深い思考力が要求されません。しかし麻雀が将棋と比べて楽かと言われれば、一概にそうは言えないとも思います。将棋の高段位者が麻雀も好きだけど、麻雀に関しては下手の横好き止まりという例も珍しくありません。
将棋は2人で40枚の駒を用いますが、麻雀は4人で136枚の牌を用います。麻雀は深い思考力を要求されない代わりに、目に見える情報を素早く把握し、的確に判断する能力が問われるゲームです。身体を使うスポーツが観戦映えするのは、常人には真似できないスピード感があってのことですから、麻雀も深い思考よりも、素早い判断に着目されるようになれば、観戦がより盛り上がるものになるのではないでしょうか。