1999年に連載がスタートした「麻雀飛龍伝説 天牌」(原作:来賀友志/作画:嶺岸信明)は、18年の月日を超え、2017年現在も週刊漫画ゴラク(日本文芸社)で連載されており、既刊コミックスは90巻に到達している。今回はその作者であり、麻雀劇画という世界を33年間にわたって書き続ける、劇画原作者・来賀友志先生に仕事論を聞いた。
来賀友志(くが・ともし)プロフィール
1956年、鹿児島県生まれ。A型。早稲田大学卒。劇画原作者。好きな映画は「男たちの挽歌」。
劇画原作者になったきっかけは?
「学生時代から一生麻雀に関わっていきたいとは思っていました。麻雀プロになりたかったんです。ただ両親が厳しかったので、麻雀に関連する出版社に入れば許してくれるんじゃないかと考え、学生の頃から竹書房の嘱託として、麻雀専門誌・近代麻雀に関わるようになりました。当時の近代麻雀は、現在のような漫画主体ではなく、活字主体の雑誌でした。採譜したり、原稿書いたり、編集したりしているうちに、23歳の時に社員になりました」
「26歳で編集長になってからは、ほとんど会社か作家さんのところにいるかで、寝るのは近くのサウナという日々。200ページある雑誌の半分近く、観戦記や戦術論などの原稿も書いてました。そういった過酷な経験があったから、原作も書けるようになったんだと思います。実際、社員でありながら、別冊近代麻雀から頼まれて、漫画原作を書いたこともありました。だから独立しても、ある程度の需要はあるかなという実感はありました。そしてもっとダイレクトに麻雀の楽しさを広めるにはどうしたらいいのかと考えた末、28歳の時に退社し、劇画原作者の道へ入ったんです」
原作を書くときは牌譜が先? ストーリーが先?
「牌譜が先のケースはほとんどありません。まずストーリーがあって、そこにどんな牌譜を入れたら決め台詞が引き立つのかを考えます。だから普段から印象に残った牌譜は全部書き留めてストックしています。麻雀劇画の基本は、負けの美学だと思っています。面白さだけじゃなくてツラさとか悔しさもまとめて伝えていきたい。勝つ奴よりも、負けた奴がどんなに格好良くなれるのか。負けた方に主眼を置いて作品を書いています」
決め台詞はどのように生まれるのですか?
「たとえば音楽を聞いていていいフレーズがあったら必ずメモしています。それを自分なりの言葉に置き換えたり、作品に活かすにはどう加工したらいいのかを考えます。原作者とは〝加工業〟みたいなところがあるんです。読切作品でも連載作品でも、1話の中に必ず決め台詞を1つか2つは入れることを鉄則にしていて、その決め台詞を中心にしていろんなところを動かしていく。常に印象に残った言葉やフレーズを、麻雀の闘牌に置き換えたらどう言えるのかを考えています」
取材スタイルは?
「いろんなところに足を運んで会話をしたり、話を聞くことが僕にとっての取材です。だから街を歩いていても、常にアンテナを張り巡らせています。24歳の頃、上司に初めて連れて行ってもらったのが、新宿ゴールデン街でした。当時から作家、編集者、カメラマンなどクリエイターたちが集まっていて、ペーペーだった僕はカウンターの片隅で、いろんな人の話に耳を傾けていました。そういうところから取材力を培ってきたんで、今でも誰かの話を聞いては、こんなふうに加工したら面白いかなと考えています。新宿ゴールデン街には、かれこれ30年以上通っていますね」
どんな人に作品を読んでほしいですか?
「ちょっと麻雀に疲れて飽きちゃった人に読んでほしいですね。飽きたら休めばいいんです。休めば時間が生まれるわけで、そのときに読んでもらえたら、勝つだけが麻雀じゃないんだな。ツライことも楽しいことも人との結びつきもあるんだな。よし、また麻雀したいなってと思ってもらえたら嬉しいですね」