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ネマタの戦術本レビュー第325回「現代麻雀30の新常識  著:土井泰昭・平澤元気 その13」

ネマタの戦術本レビュー第325回「現代麻雀30の新常識 著:土井泰昭・平澤元気 その13」

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命題25

 一昔前に並びシャンポンについてはツモりやすいという主張があったことは私も記憶していますが、根拠について書かれたものを見たことはありません。

 本書に書かれてあるような理由で並びシャボは通常のシャボより出アガリしにくいと言えます。出アガリしにくいということはアガった時はツモアガリの割合が多くなるので、体感的には「ツモりやすい」ような気がしたのではないかと推測します。

 通常シャボより良形変化が少ない(しかも手変わりしても自分で2枚使っている亜リャンメン形)ので昔の基準でも即リーチしていたため、結果的にツモアガリが増えたというのもあるかもしれません。

 456牌同士のシャボとカン7なら、並びシャボを考慮しなくても後者を選ぶことが多いので、の形でテンパイした場合も打リーチとすることが有利になることが多いでしょう。

 本書にある通り、テンパイ同士であれば少しでもアガリやすい待ちを選ぶべきなですが、命題は鳴いてテンパイとメンゼン1シャンテンの比較なので、テンパイ時の多少のアガリ率の差によって判断が変わることはあまり無さそうです。

命題26

 「完全1シャンテン」の定義は諸説ありますが、「2メンツ、テンパイ時に必ずリャンメン以上の待ちに受けられる、受け入れを増やさない余り牌が無い」1シャンテンを完全1シャンテンと定義するのが便宜的とみます。この定義であれば、本書184頁の(1)(3)は完全1シャンテン。(2)は完全1シャンテンではないことになります。

 完全1シャンテンの概念自体は、「沼崎定石」という形で実は戦前の昔から存在していましたが、完全1シャンテンの優位性が一般的に知られるようになるにはだいぶ時間がかかりました。

 いつ頃主流になったのかはよく分かりませんが、「デジタル麻雀」という言葉が登場する以前の麻雀本には、現代の観点からはそうするだけのメリットが十分にあるとは思えない「完全1シャンテン崩し」が多用され、何故完全1シャンテンに受けないかについては何ら解説がされていないという描写が度々あったことは記憶しています。

 具体例としては、何切る問題として度々取り上げられている

 私は打としますし、10年ほど前に近代麻雀でアンケートが取られた時も打が多数派でしたが、30年以上前は打が多数派だったようです。

 打が多数派時代だった当時のプロの解説を見ても、「完全1シャンテン」という言葉が一言も出てこないあたり、このような概念自体がほとんど浸透していなかったことが伺えます。

 現在では当たり前に用いられている「完全1シャンテン」という用語ですが、手牌(2)のように完全1シャンテンよりアガリやすい1シャンテンも多数あり、そもそもリャンメン×2の1シャンテンと比べても大幅にアガリやすいというわけではありません。

 これ以上の手変わりが見込めないという意味では「完全」と表現自体は適切だと思いますが、「完全」という言葉の強さから過大評価されがちなのは確かです。今回のデータについては、実戦では安牌要因で残した牌も完全に安牌と言えることはそれほどないので、半端に守備を考慮するくらいなら完全1シャンテン残しに分がありそうですが、いずれにせよ大差はつかないので、局面に応じた臨機応変な選択が求められると言えそうです。

本記事に関するご紹介

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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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