第12期雀竜位・斎藤俊プロ(日本プロ麻雀協会)によるプロ対局の寸評記事!今回は11月3日に行われた「女流雀王戦第8節(最終節)」です。
今回は水瀬千尋について。
結果から言えば、彼女は最終戦で女流雀王決定戦へのチケットを水崎と競り合った後、掴み損なってしまう---
勝者にはこれから光が当たる。今回は逆視点からお伝えする。
前回記事で触れたように水瀬は、水崎ともみとの直接対決の卓になっている。
1回戦は水崎が抜け番。ここで引き離される訳にはいかない。
南1局 親:大崎 ドラ
大崎:21000
多田:32700
崎見:17000
水瀬:28300
大崎の手
ポン ポン
多田からもリーチが入り、11巡目は水瀬もテンパイ。
ツモ
大崎からは既にソーズが溢れている。親の大崎に放銃すれば多田を捲くることは一筋縄ではいかなくなる。かといって大崎に大物手を和了されても結局自分のトップは苦しい。
残留を目指す大崎は、最後の親番で降りないだろう。一方多田への放銃も厳しい。多田の和了すら避けたいところだ---
麻雀の本質は、博戯である。自分の得すると判断した選択をし続け、その結果を待つ。それをひたすらに繰り返す。
少し場を眺めた後に、水瀬は自分の手に目線を落としゆっくりと瞬きをして、ド級危険牌のをヨコに向ける。
こちらが頼もしさを覚えるほどに腹を括れている。リーグ戦の第一節ならばオリを選択しただろう。しかし今は最終節、1局単位で不利な抽選でもそのなかから当選を引きに行く判断だって迫られる。
『水瀬は判断の刀が鋭く、振り切りも良い。もうひと波乱あるかもな・・・』と私は思っていた。
展開こそ厳しそうだったが粘りに粘り2着2着とまとめあげ、抜け番を跨いだ4回戦、ついに1着を取り最終戦ほぼトップ条件というところまで漕ぎついた。
最終戦
東1局 親:大崎 ドラ
終盤にかわし手気味に受けた大崎の2400点の和了、多田の放銃で幕を開ける。
ロン
1本場で当面のライバル水崎に既にリーチをかけていた多田がドラを河底牌で放銃。
チー チーチー ロン ドラ
南1局にも水崎にマンガンをツモられる。
ツモ
南2局 ドラ
ビハインドを背負った水瀬の最後の親。水崎38600に対し水瀬21600
この親番をこの点差で落とせば今年の決定戦との御縁は遠のく。
多田の先制リーチが入る。
水瀬はこの形から危険牌を「通せ!」の祈りと共に切り出される。
ポン チー
何枚の無筋を押しただろうか。中巡過ぎにようやくテンパイ。自分の河にがある。
ツモ ポン チー
テンパイの取れるマンズは全て無筋。切りの安全なフリテンテンパイの甘い誘惑もあるが残り枚数が非常に少なく、ここでは悪手だろう。
との安全度と山に残っている枚数を慎重に検討しを切りとばす。
この先制を受けた局では勝利に近い親権維持での連荘となった。点差こそあれど手ごたえのあるテンパイだったろう。
しかし次局、水崎が水瀬の連荘にストップをかけた。
ポン チー ロン
大崎から3900は4200の出和了。
南3局は残留を決めるため大崎が平和ドラ1をヤミテンに構え水瀬が放銃となってしまう。オーラスは水崎のウイニングラン----
水瀬の麻雀の内容は申し分ない。女流Aのトップクラスだろう。
『悔しいだろうな・・・』
来年の決定戦挑戦者の第一候補として彼女を推せると確信した。
敗者の悔しさを背負い朝倉ゆかりに挑戦するのは竹居みつき、水崎ともみ、佐月麻理子の3名となった。
女流雀王Aリーグ第8節(全8節)
順位 | 氏名 | 第8節 | TOTAL |
---|---|---|---|
1 | 竹居 みつき | 248.3 | 321.9 |
2 | 水崎 ともみ | 2.5 | 237.0 |
3 | 佐月 麻理子 | ▲16.1 | 218.4 |
4 | 石井 阿依 | ▲2.5 | 182.2 |
5 | 水瀬 千尋 | 88.0 | 126.2 |
6 | 大崎 初音 | 171.9 | 58.7 |
7 | 月城 和香菜 | ▲175.6 | 24.7 |
8 | 多田 ひかり | ▲123.6 | 8.3 |
9 | 米崎 奈棋 | ▲43.8 | ▲14.5 |
10 | 愛内 よしえ | 3.5 | ▲54.3 |
11 | 福山 理子 | ▲182.4 | ▲55.4 |
12 | 豊後 葵 | ▲15.8 | ▲150.3 |
13 | 庄司 麗子 | ▲34.0 | ▲236.8 |
14 | 冨本 智美 | 218.4 | ▲312.1 |
15 | 崎見 百合 | ▲139.8 | ▲490.0 |
竹居、水崎、佐月が女流雀王決定戦進出。豊後、庄司、冨本、崎見が女流Bリーグに降級
女流雀王Bリーグ第8節(全8節)
順位 | 氏名 | 第8節 | TOTAL |
---|---|---|---|
1 | 逢川 恵夢 | 105.3 | 524.3 |
2 | 中月 裕子 | ▲22.8 | 389.6 |
3 | 鳥井 ゆう | 63.2 | 338.9 |
4 | 上田 唯 | 76.0 | 273.9 |
5 | 松嶋 桃 | 9.0 | 255.2 |
6 | ERIKA | 181.5 | 195.4 |
7 | 水口 美香 | 101.9 | 145.2 |
8 | 三添 りん | 76.1 | 94.6 |
9 | 大島 麻美 | ▲79.9 | 39.4 |
7 | 華村 実代子 | ▲90.5 | ▲45.4 |
11 | 蔵 美里 | ▲6.9 | ▲71.1 |
12 | 奥村 知美 | ▲13.9 | ▲124.0 |
13 | 日當 ひな | 23.6 | ▲160.0 |
14 | おくみき | ▲71.1 | ▲224.5 |
15 | 有栖 麻理奈 | 68.9 | ▲336.4 |
16 | 崎村 あやか | ▲78.3 | ▲412.2 |
17 | 都美 | ▲137.1 | ▲431.7 |
18 | 会田 日和 | ▲206.0 | ▲505.2 |
逢川、中月、鳥井、上田が女流Aリーグへ昇級。有栖、崎村、都美、会田が女流Cリーグに降級
女流雀王Cリーグ第8節(全8節)
順位 | 氏名 | 第8節 | TOTAL |
---|---|---|---|
1 | 澄川 なゆ | ▲7.2 | 426.0 |
2 | 杉村 えみ | 50.5 | 365.9 |
3 | 倉岡 薫 | 110.7 | 196.6 |
4 | 中山 百合子 | ▲18.0 | 175.4 |
5 | 麻生 ゆり | ▲7.6 | 172.3 |
6 | りんの なお | ▲44.4 | 159.8 |
7 | 柚花 ゆうり | ▲116.2 | 71.8 |
8 | ふゆつみ 千明 | 191.2 | 53.3 |
9 | 藤森 ナオ | ▲104.5 | 12.0 |
10 | 青木 さや | ▲45.3 | ▲8.1 |
11 | 古屋 佳奈子 | ▲33.9 | ▲72.5 |
12 | 命 | ▲78.4 | ▲105.8 |
13 | 綾瀬 まり | 83.9 | ▲144.0 |
14 | 黒崎 有希 | 181.2 | ▲194.1 |
15 | 水谷 葵 | ▲57.0 | ▲231.5 |
16 | 川又 静香 | 3.0 | ▲279.9 |
17 | 中込 侑希 | ▲50.0 | ▲303.5 |
18 | 水瀬 夏海 | ▲62.2 | ▲349.7 |
澄川、杉村、倉岡、中山、麻生が女流Bリーグに昇級