”麻雀賢者”や”卓上の魔術師”など、知性があふれるキャッチフレーズが並ぶ。
Mリーガー21名の中で一番実績も知名度もない男が、Mリーグで与えた衝撃は一番大きかったのではないだろうか。
今回は園田賢プロの軌跡を紹介したいと思います。
園田賢プロフィール
◆園田賢(そのだけん)
◆生年月日:1980年11月25日(38歳)
◆出身地:兵庫県神戸市
◆血液型:A型
◆所属チーム:赤坂ドリブンズ
◆所属プロ団体:最高位戦日本プロ麻雀協会
◆趣味:カラオケ、お酒、海外ドラマ
◆主な獲得タイトル:麻雀駅伝2018団体優勝、The All Star League 2017、2018優勝(チームおじまご)
◆Twitter:@sonodaken
音楽中心の高校生活から麻雀中心の大学生活へ
2018年8月7日に行われたドラフト会議で赤坂ドリブンズから1位指名を受けた園田賢プロ。
全体で1人目の指名ということもあり、会場中の注目を一身に集めました。
本人も驚きが隠せない様子が映し出されています。
園田が麻雀を覚えたのは名門灘高校時代。当時所属していた卓球部の仲間の影響で麻雀を覚えます。
しかしこの頃園田の心を奪っていたのは音楽活動。園田の高校生活は大変充実したものでした。
音楽活動に時間を割いていたため、現役での進学はかなわなず浪人を選択した園田。
アルバイト先の思い人に彼氏ができたことをきっかけに新たなバイト先を探すことにしました。
高校時代の同級生、サイコロ太郎(※1)と共に選んだのは麻雀店のオープニングスタッフ。
まだお客様がいないこのお店に他の友達を呼び寄せ麻雀三昧の生活を送った園田、1年間の浪人時代に予備校に行ったのはわずか3日だったといいます。
1年間の浪人生活を終え、慶応義塾大学に進学した園田は、大学生活を謳歌するためにテニスサークルに入会しました。
しかし、ここで麻雀好きの先輩と出会い、結局大学時代も麻雀三昧の生活に。
先輩が掛け持ちしていたサッカーサークルの部室にあった全自動卓を自宅に移動し、2か月後には常に卓が稼働しているという溜まり場と化してしまいました。
浪人時代から交際し、遠距離恋愛中の彼女が遊びに来た時も隣で麻雀をしている有様。1年ほどで終焉を迎えてしまい、その後しばらく麻雀が恋人の生活が続きます。
大学二年ごろから通い始めた麻雀店では坂本大志(※2)とも出会い、麻雀店でのアルバイトも再開しました。
麻雀を覚えた当初は亜空間殺法を繰り出していた園田ですが、このころから現在の麻雀に近いスピード重視のスタイルを磨き始めます。
22歳でのプロ入り 内定を辞退して麻雀プロの道へ
そんな大学生活も5年が経過し卒業を間近に控えた園田は、「就職活動で大学時代にやってきたことは」と聞かれたときに、麻雀以外何もないという現実に直面します。
それならばずっとやってきた麻雀をきちんと形にしようと思い、第28期後期(2003年)に22歳で最高位戦を受験し、見事合格しました。
アルバイト先の麻雀店にプロになった旨を報告すると、いわゆるギャル雀(※3)と呼ばれるコンセプトとの違いを理由に、なんとクビになってしまいます。
その後、当時渋谷にあった強者が集まることで有名な東風戦の麻雀店で働き始めた園田は、そこでの麻雀が面白すぎたこともあり、システムエンジニアの内定を辞退して働き続けることに。
この東風戦での経験は園田のスピード重視のスタイルを確立させました。また、この頃「その研」という研究会を立ち上げます。
当時の勉強会は実績があり発言権の強い選手の意見を正解として取り入れる風潮であると園田が感じており、自由に意見をぶつけ合いお互いの引き出しを増やし高め合う場にしたいという気持ちがあったのです。
この園田の姿勢は今でも変わらず持ち続けてきたことが、ドリブンズの楽屋で行われているリアルタイム検討にも見受けられます。
紆余曲折を経て運命のドラフト指名、そして初代Mリーグ王者に
リーグ戦では順調にB2まで昇級しますが、第32期(2007年)のB2リーグをなんと▲23.4で降級してしまいます。
翌年のC1リーグは自身の結婚式と日程が重なり、無念の休場。
渋谷の麻雀店を辞めた後はサラリーマンを続けますが、結婚を機に稼げる仕事をと転職した職場では、激務ながら3年で年収は1000万を超えます。
しかし、結婚生活は3年で終わりを迎えました。
またこの頃からB1リーグに昇級して水曜日の対局が増えたため、仕事が休めず、職場の後輩の影響を受け、ウェブサイト運営で生計を立てることを目指し退職。
このサイト運営、徐々に軌道に乗りようやく目処が立ってきたところで、某社の検索エンジンが変更となり破綻してしまいます。
さらに酔っ払って地下鉄で寝てしまい、鞄を置き引きされ一財産を失ってしまいます。
これらをきっかけに再びサラリーマン雀士としての道に戻ることを選んだ園田。
この後もタイトルにこそ縁がありませんが、プロとしての評価を高めていきます。
最高位戦内や、それと近しい界隈では非常に高い評価を得ていましたが、この評価は入会当初から続くものでした。
この点について本人に尋ねたところ、
「俺はその点がツイてるんだよね。最初は仲間内のセット面子で勝ってて強いといわれて、その後は麻雀店、プロ入り当初、そして渋谷時代。環境のレベルが上がる段階でちょうどよく自分の雀力も向上していく事が出来た。そのお陰でモチベーションを保ち続けることが出来たんだよ。始めたての頃にいきなり渋谷スタートだったらめちゃくちゃ負けて嫌になってたかもしれない。」
と語っていました。
確かに知らないゲームを始めてやってボコボコにされ続けても投げ出さない人は少ないでしょう。
しかし、これを冷静に自己分析できる点が園田の強みであり、最初からライオンの檻に入れられたとしても、なんとかそこから生き残る道を導き出し、やはり評価される存在になっていたのではないか、と私は思います。
リーグ戦では第42期(2017年)からAリーグに所属。
決定戦にも進出して2位でこの年を終え、翌年の赤坂ドリブンズからの指名となりました。
ここからは皆さんもご存じの通り、Mリーグでは八面六臂の大活躍でチームをファイナル進出に導きます。
ファイナルシーズンでも好調なチームの一員として個人3位の成績を残し、見事初代王者に輝きました。
さてそんな園田ですが、浪人時代にとあるボーカルオーディションに参加していました。
そのオーディションとは超人気番組「ASAYAN」の企画「男子ボーカルオーディション」。
参加総数1万人越えのこのオーディションに書類選考で落ちてしまいます。
ここからデビューすることになったのが「ケミストリー」。
これがきっかけで音楽の道を諦め、麻雀の世界に進むこととなりました。
ケミストリーにはなれなかった園田が卓上で、そしてチームメートと魅せるケミストリーが来期も楽しみですね。
※1 サイコロ太郎(さいころたろう)・・・日本プロ麻雀協会A2リーグ。佐井孝太郎をもじってサイコロ太郎を登録名にしている。獲得タイトル:第2回オータムチャンピオンシップ
※2 坂本大志(さかもとまさし)・・・最高位戦Aリーグ。裏方として最高位戦を支える一方、プレイヤーとしてもAリーグ4年目を迎え最高位の座を狙う。獲得タイトル:第4期最高位戦Classic
※3 ギャル雀(ぎゃるじゃん)・・・90年代に流行した女性店員が中心の雀荘のこと。いまでは当たり前の光景だが当時は珍しく、高田馬場にあった「ポリエステル100%」を皮切りに全国に誕生し、一世風靡した。
年 | 年齢 | 主な出来事 |
---|---|---|
1980 | 0歳 | 兵庫県神戸市生まれ |
1993 | 13歳 | 灘中学・高校に進学 |
1999 | 19歳 | 慶應義塾大学に進学 |
2003 | 22歳 | 最高位戦に入会(第28期後期) |
2017 | 37歳 | Aリーグに昇級。決定戦にも進出するも村上淳に敗れて2位。 |
The All Star League 2017にチームおじまご(園田・木原浩一・愛内よしえ)として出場し、優勝。 | ||
2018 | 38歳 | 麻雀駅伝2018に出場し最高位戦チームを優勝に導く |
The All Star League 2018にチームおじまごとして出場し、連覇達成 | ||
Mリーグが発足し、赤坂ドリブンズに1位指名される | ||
2年連続決定戦に進出するも、またしても2位で終える | ||
2019 | 38歳 | Mリーグ初代チャンピオンに輝く |