2014年に麻雀最強位を獲得した藤田晋さん(サイバーエージェント社長)が、団体の垣根を超え、現在の麻雀界を代表する最高のトッププロ達14名を招いて開催される長期リーグ戦「藤田晋invitational RTDマンスリーリーグ」。無料で楽しめるインターネットテレビ局・AbemaTV(アベマティーヴィー)で好評放送中の番組もいよいよ後半戦を迎える。
そこで今回、元々はプレイヤーとして活躍しながら、現在は麻雀関連のプロダクション「(株)RTD」を立ち上げて、この番組のプロデューサーも務める張敏賢プロ(最高位戦日本プロ麻雀協会)に開催のいきさつや、番組の見所、メンバーの選定など番組制作の裏話を聞いた。
最強位獲得はまぐれでは無いことを証明したい
張:本大会を開催したいきさつなんですが、私が藤田社長と知り合って麻雀を打つようになり、最強戦などの大会に出てガチな麻雀がやりたいとおっしゃられたんです。元々相当な実力があったうえ、練習で麻雀をしたり、アドバイスを送ったりしていたところ、2014年の「麻雀最強戦 著名人代表決定戦」に勝ち、さらにそこからファイナルに向けてたくさん練習すると、見事に優勝して「麻雀最強位」になりました。
日本最大の麻雀大会「麻雀最強戦2014」(主催:竹書房・近代麻雀)で優勝し、「最強位」となった藤田晋社長。参加者3000人の頂点に立った。
麻雀最強戦公式サイト:http://mahjong-saikyosen.com/
張:いきなりもの凄い高さにある目標をクリアして、もう麻雀はいいやとなるかと思ったのですが、藤田社長は「勝ったのはまぐれだと言われるのが嫌だ」と。もちろん直接言われたわけではないでしょうが、最強戦は一発勝負なので、勝ったのはもちろん凄いのですが、運が良かっただけと見られるのは本意でないと。戦術本と放送対局は全部目を通し、
お付き合いしているこちらが心配になる位真剣に取り組んでいましたから、当然だと思います。
そこで「2015年中にもう一つタイトルが欲しい」ということと、プロ麻雀界を盛り上げたいということも含めて、1年間麻雀に関するオファーを全部受けられました。どんな小さい番組でも出たんですね。もちろん、本命は最強戦の連覇なんですが、たくさんの大会や麻雀番組に出演してどこかで勝ちたいと。
2015年6月に行われた「麻雀の鉄人 挑戦者 藤田晋」。惜しくも敗れたが、最終戦でツモれば逆転の四暗刻をテンパイするなど見せ場を作った。対戦相手は村上淳(最高位戦日本プロ麻雀協会)、多井隆晴(RMU)、成岡明彦(101競技連盟)
張:そのために稽古をする場所を作ろうということになりました。ちょうど村上淳プロや鈴木たろうプロ、小林剛プロなどと「リーグ戦をやりたいですね」と盛り上がったこともあり、その運営をRTDとしてやってください、ということになったのです。
各団体にもご協力いただき、トッププロばかりを毎月8人集め、2日間で予選8回、上位4人で決勝1日といった大会を月単位行う形式で、去年の冬から始まりました。ようは「藤田リーグ」という形なんですが、「萩原リーグ」もあるし、(注:俳優の萩原聖人さんが開催し、放送もされているプロ・アマ混合の私設リーグ戦)ちょっと気恥ずかしいなということで、運営を担当する弊社の冠を付け、毎月行う大会という所から「RTDマンスリー」という名前でやりましょうということになりました。
株式会社RTDは、「新しい麻雀文化を創設する」という理念の元に「RTDマンスリーリーグ」の他にも「麻雀企業対抗戦」の運営やイベントのプロデュースなどを行う。西麻布にこれまでにないスタイリッシュな店舗を構え「RTDマンスリーリーグ」前半戦の会場として使われている。「RTD」は「リーチ・ツモ・ドラ1」の頭文字を取って名付けられた。
RTD公式サイト:http://www.rtd.co.jp/
張:こうしてまさに「虎の穴」的な場が出来たのですが、この年の秋くらいにはAbemaTVの麻雀チャンネルの話が出てきまして、そのコンテンツの一つとして、じゃあこれをそのまま放送したらいいじゃないかと。
各番組でプロの真剣勝負をご覧になり、その魅力を感じた藤田社長は、もっと広く支持される可能性があると思うと仰ったのです。対局番組がそんな大きな話になるなんて、正直大丈夫なのかと思いましたが、僕も選手達もとにかくこれはやるしかない!と(笑)
藤田社長のご厚意で大会名も変更せず、番組名としてさせていただくことになりました。
あらゆる番組・大会に出たが、唯一出られないのが「リーグ戦」
張:先ほど、藤田社長が2015年にありとあらゆる対局番組・大会に出たと話しましたが、途中でぼそっとおしゃってまして「出られない大会が一つあるな」と「本当はプロのリーグ戦に出たい」と。
「RTDマンスリー」は月に3回開催で、1年間ある。じゃあ思い切って月単位じゃなくて長期のリーグ戦にしちゃいましょうとご提案し、AbemaTVは4月開局だから、じゃあ2月から収録でという形でまとまったのです。
それまで多くのトッププロにご参加いただいていたのに、8人で1リーグにしちゃうと出られない人が出てきてしまうから、16人2リーグにして・・・収録月3回は多いので2日間にしてもらって・・・など細かく調整していってシステムが決まっていきました。
AbemaTV(アベマティービィー)は、サイバーエージェントとテレビ朝日が共同出資し、展開する映像配信サービス。2016年3月1日から先行配信がスタートし、4月11日に正式開局した。スマートフォンはもちろん、PCやタブレットなど様々な端末で、いつでもどこでも気軽に、無料で視聴できる。24チャンネルの中にはニュースや音楽、アニメ、スポーツと並んで「麻雀チャンネル」も入っており、24時間いつでも麻雀番組が楽しめる。
AbemaTV麻雀ch:https://abema.tv/now-on-air/mahjong
AbemaTV麻雀ch公式Twitter:https://twitter.com/abema_mahjong
プロのトップリーグ並のシステムで白黒つけよう
張:予選を8人の長期リーグ戦で行うので、同じ人たちが何回も当たります。視聴者の方を混乱させているかもしれません。
で、この予選28回戦というのが、どれ位の長さなのかというと、プロ団体の「トップリーグの年間リーグ戦」が40回戦〜48回戦です。
そしてリーグ上位3名が、前年王者と決勝を15〜20回戦で行います。マンスリーは決勝までで44回戦。さすがに年間リーグ戦には及びませんが、近い回数は確保できました。
そして28回戦を8人でやった時に同じ人と当たる回数は、48回戦を12人で行う最高位戦のAリーグとほぼ同じなんですよ。つまり、白黒付ける相手との勝負付けとしては1年間のプロのリーグ戦と変わらないと。
視聴者的には、1回の放送で勝者が決まった方が見やすいし、放送対局で長いリーグ戦をやるのは、諸々コストも掛かるし難しいですよね。
プレイヤー時代に僕も番組に出演させていただいたりしたのですが、そちら側の視点だとやっぱり「もう少し長く打ちたい」んです!これは僕の主観で、他の人に確認した訳ではないですが(笑)、本場所は皆リーグ戦なのですから、できればそうしたいはずです。
もちろん1回勝負でも、短期戦でも真剣勝負には変わらないし、短いからこそ凄く濃縮された勝負にもなります。
今では機会も増えましたが、せっかく滅多に対戦しない他団体のトッププロと対戦するのだから、本当に白黒付けられる様な場を作りたい、というのが以前からの目標の一つだったのです。
お話したようなこれまでの経緯と合わさり、念願が叶ったというか、受け手の反応が見えない最初のタイミングだからこそ、作り手側の思い入れが強く出せたりする。半ば確信犯的に念願を叶えたという所もありますね。
■RTDマンスリーリーグ大会システム
・現在の麻雀界を代表する最高のトッププロ14名が、「BLACK DIVISION」「WHITE DIVISION」の2ブロックに分かれる。藤田晋さんは両DIVISIONに参加する。
・予選は8名2組で開催。各組全28回戦(7節)を打ち、各DIVISIONの上位4名が準決勝へ進出。
・準決勝は予選のポイントを半分持ち越し、上位8名で対局。全16回戦(4節)を打ち、上位4名が決勝進出。
・決勝はポイントをリセットし、全8回(2節)で開催。
第4節を終えてBLACK DIVISION首位の藤田晋さんはトッププロを相手に完璧なゲーム運びを見せる。
自分は絶対に予選通過できると思っている人しか参加していない
張:予選は28回戦あって、2分の1(8人中4人)通過なんですが、全員が「絶対自分は通過できる」と思っています。実際に勝ってきた人しかいませんから。でもどうやっても4人は落ちちゃうんですが、これだけ打って予選落ちるというのは相当に悔しいはずです。選手もインタビューで「これ負けたら本当にシャレにならない」と言っています。
■RTDマンスリーリーグ参加選手
・藤田晋 麻雀最強位2014
Black Division
・多井隆晴(RMU) 第1・3・6期RMUリーグ、第5期RMUクラウン、第31期王位、第1・9回日本オープン
・勝又健志(日本プロ麻雀連盟) 第2期麻雀グランプリMAX、第32期鳳凰位
・柴田吉和(日本プロ麻雀連盟) 第32期十段位、第28期新人王
・白鳥翔(日本プロ麻雀連盟) 第24期麻雀マスターズ
・鈴木たろう(日本プロ麻雀協会) 第9・11・12・13期雀王、第15期最強位、第2期優駿位、第14期無双位、第10回BIG1カップ
・滝沢和典(日本プロ麻雀連盟) 第31・32期王位、第2回モンド王座、第13回モンド杯、第1回麻雀トライアスロン 雀豪決定戦
・村上淳(最高位戦日本プロ麻雀協会) 第35・39期最高位、第5・9期最高位戦Classic、第14回モンド杯、第10回モンド王座
White Division
・石橋伸洋(最高位戦日本プロ麻雀協会) 第36期最高位、第19期發王位、第10回モンド杯
・井出康平(日本プロ麻雀連盟) 第12回野口賞、第16回モンド杯
・小林剛(麻将連合) 第3回野口賞、第3・7・9期将王
・佐々木寿人(日本プロ麻雀連盟) 第9・11・12回モンド杯
・鈴木達也(日本プロ麻雀協会) 第2・6・8・10期雀王
・瀬戸熊直樹(日本プロ麻雀連盟) 第26・27・29期鳳凰位 第28・29・30期第十段位
・山田浩之(日本プロ麻雀連盟) 第19期チャンピオンズリーグ
麻雀プロ団体は日本にいくつかあり、RMU・最高位戦日本プロ麻雀協会・日本プロ麻雀協会・日本プロ麻雀連盟・麻将連合が主要五団体とされている。それぞれ所属プロのみが参加出来るリーグ戦を行っているほか、他団体の選手も参加出来るオープン大会も開催している。「RTDマンスリーリーグ」は各団体のトップ選手が長期でリーグ戦を戦う初めての試みとなる。
前半戦は苦戦を強いられている多井隆晴。後半戦の巻き返しなるか。
張:これから予選が佳境になってくるのですが、その生き残りをかけた戦いは重みが増してきます。元々自分がやりたいなと思って作ったのですが、実際自分が出ると想像したら、かなりキツイなと(笑)これまでリーグ戦で半分以下にいたことが無い人たちばかりなんですよ。短期戦ならわかりますが、年間の長期戦で16人中9位とか10位に殆どいたことがない人達、いつも昇級争いしかしたことがない人達ばかりなので、それを知っている人は余計に面白いでしょうね。
多井さんがあんなに負けてることなんて見たことが無いです。(第4節終了時で▲292.5)インタビューでも言っていましたが、20年間やっていてはじめての経験なわけですよ。逆にここから巻き返すというのはやったことがない。皆さん実力も実績も凄いのですが、そういう意味では今までに経験の無いプレッシャーがかかってくることがあると思います。
麻雀の対局自体を初めて見る方も多いかと思いますが、まずは普通にみていただいて、進行に合わせる形で、放送の中でもこのような舞台の設定と選手の立場や気持ち、などを上手く伝えたいと考えています。