Mリーグのレポーターを依頼された時の気持ちは?
「アナウンサーは大好きな仕事なんですが、次に何が好きかと聞かれれば『麻雀です!』と即答するほど麻雀も大好きなんです。しかも麻雀の歴史が変わるようなMリーグにアナウンサーとして携われるってすごく幸せなことだなと思いました」
「だから私にとっては、好きなことと好きなことが仕事になる一番ラッキーなポジションを頂けたという感じです」
勝利者インタビューで意識されていることは?
「麻雀のヘビーファンでもライトファンでも楽しめるインタビューでありたいと思っています。どちらの視聴者も見てくれていると思うので、誰にとっても飽きさせないように、対局内容の話をすることは当然として、それ以上に選手の個性をインタビューで少しでも引き出せたら、麻雀を競技スポーツとして大衆に広げていくという観点ではベストだと思っています」
選手の個性を引き出す秘訣は?
「元々個性の強い選手が多いんですが、ライト層の方にもその個性を本人の言葉でわかりやすく伝わるよう、選手各々をキャラ立てしていけたらと思っています。そのキャラクターから、感情移入できるきっかけが生まれれば、応援したくなると思うからです」
「たとえば、サラリーマンとMリーガーとの二足のわらじで活躍する赤坂ドリブンズの園田賢さん。それを強調するために『Mリーマン』と称したり、サラリーマンの皆さんに向けたメッセージをお願いしてみたりしたのは、公務員ランナーとして著名な川内優輝さんのように、世間で話題になればと思ったからです」
「同様にどういうことを聞いたら、その選手にしかない個性をうまく引き出せるのかはすごく考えています」
インタビュー前に行っている「準備」とは?
「AbemaTVはSNSと密接な関係があるので、SNSは必ずチエックしています。そしてできる限り選手とはコミュニケーションを取りながら、ネタになりそうなことはメモしています」
「何よりも大切にしていることは、実況、解説、対局、インタビュー、それらすべてを含めて番組としてひとつのパッケージとして成立することです。だから実況や解説でどういうことを話しているのか、一言一句を聞き逃しません。実況や解説で盛り上がった部分に関しては、選手本人の生の声を絶対聞きたいと思うので、そういう部分はインタビューでもフォローするようにしています」
試合展開によっては、準備が大変では?
「確かにダントツの展開となった方が、インタビューも対応しやすくなります。もちろん誰がトップを取るのか最後までわからない展開もあるので、全体メモの他に選手個人ごとのメモには付箋を分けて誰がトップを取ってもすぐに対応できるように準備しています」
「だからマイナスからの大逆転といったように、対局内容自体が盛り上がった時は、誰にとっても面白いはずなので、細かいことは聞きません。ただ対局が淡々と終わってしまうこともあるので、そういう時は、対局内容に関しては気になったことだけにして、どちらかというと選手のプライベートなことを聞くようにしています」
わかりやすく伝えるための「言葉」や「ネタ」の選択基準は?
「この番組に携わっている人で、一番麻雀がわかっていないのは私です。MCの小林未沙さんは元プロ雀士、松嶋桃さんは現役プロ雀士ですが、私はアマチュア。なので、世界中の全員が私より麻雀上手いと思っています。だから私自身がわからないことは、視聴者もわからないはずというスタンスなんです。視聴者の皆さんと同じ愛好家目線でいられることが、わかりやすい言葉やネタの選択につながっているんだと思います」
松本さんにとって麻雀はどんな存在なのでしょうか?
「一生大好きな存在。嫌いになることはないと思います。アナウンサーという仕事も一生続けていくと思うし、麻雀も一生続けていきたい。麻雀友達とお互い結婚できなかったら、同じ老人ホームに入って毎日麻雀しようねって約束しているんです。だから老後は安泰です(笑)」
仕事と麻雀が共通していることはありますか?
「人生も麻雀もいい時もあれば悪い時もある。麻雀は内容も良くしっかり打てたと思えても、まったく勝てない事なんていくらでもありえます。そういうどうしようもなく抗えない時は、やめるのではなく、逃げたらいい。どんなに負けても、どんなに辛くても、どんなに嫌だったりしても、やめなければ絶対に楽しいことや面白いことの方が多いと思うんです。たとえ逃げても、好きだから戻れるので続けられる。私にとってはそこが共通しています」
好きな言葉は?
「『くじけない楽観主義』。2010年にノーベル科学賞を受賞された根岸英一さんがスピーチで使われていた言葉です。嫌なこととかダメなこととかいろいろあるけれども、それを思い悩んで折れてしまうのではなく、楽観して前向きにというのが、初めて聞いた時から私のための言葉じゃないかと思うほど響きました。麻雀にも通じる言葉だと思います」
インタビューを終えて
「インタビューアーは映らなくてもいいとすら思っています。選手の表情が見えて、選手が自分の言葉でどう話すのかが大事であって、私は選手がしゃべりやすいように促すだけの黒子なんです」と常に選手ファーストの松本さん。好きなことは好きと公言し、わからないことは聞く。まさに八面玲瓏な勝利の女神だった。
インタビュー・文責:福山純生(雀聖アワー) 写真:河下太郎(麻雀ウオッチ)
マージャンで生きる人たち back number
- 第1回 株式会社ウインライト 代表取締役社長 藤本勝寛
あらゆる挑戦は、すべて〝妄想〟から始まる - 第2回 株式会社F・R・C代表取締役 香宗我部真
"作業"が"仕事"に変わった先にあるもの - 第3回 ターナージャパン株式会社 制作部 プロデューサー 上島大右
好きなことを仕事にしようと考えるより、自分の仕事を好きになる努力するほうがいい - 第4回 フリーアナウンサー 土屋和彦
しゃべるのが仕事。しゃべることを取材することも仕事 - 第5回 株式会社セガ・インタラクティブ セガNET麻雀MJディレクター 高畑大輔
「マージャンのおかげでキレなくなりました(笑)」 - 第6回 RTD株式会社 代表取締役 張敏賢
「目指すは、新しいマージャン文化の創造」 - 第7回 漫画家 片山まさゆき
「盆面〈ぼんづら〉がいい人生。仕事も麻雀も。そうありたい」 - 第8回 株式会社アルバン 専務取締役 船越千幸
「奪い合うのではなく、増えるきっかけを生み出す」 - 第9回 健康麻将ガラパゴス創業者 田嶋智裕
「参加者に喜ばれ、なおかつ社会的意義のあることをやり続けたい」 - 第10回 株式会社日本アミューズメントサービス代表 高橋常幸
「希望が持てる業界を構築し、麻雀で社会を変えたい」 - 第11回 《More》プロデューサー 菊池伸城
「躊躇なく一気にやることで、世界は開ける」 - 第12回 麻雀キャスター 小林未沙
「想像力をどれだけ膨らませられるかが勝負です」 - 第13回 麻雀評論家 梶本琢程
「面白かったら続けたらいい。うまくいかなかったら次を考えたらいい」 - 第14回 麻雀AI開発者 水上直紀
「常識を疑い、固定概念を崩したい。強くなるために」 - 第15回 麻雀観戦記者 鈴木聡一郎
「ニュースがライバル。そう思って書いてます」 - 第16回 株式会社サイバーエージェント AbemaTVカンパニー編成部プロデューサー 塚本泰隆
「決断したことに後悔はしない。麻雀から学んだ思考です」 - 第17回 劇画原作者 来賀友志
「麻雀劇画の基本は〝負けの美学〟だと思っています」 - 第18回 株式会社シグナルトーク代表取締役 栢孝文
「始める、続ける、大きく育てる。愛する麻雀の“弱点”を補うために」 - 第19回 フリーライター 福地誠
「まだ本になったことがない新テーマの本を作りたい」 - 第20回 声優 小山剛志
「もがき、あがき、考える日々。一体いつまで続けられるのか」 - 第21回 映画監督 小沼雄一
「大変だけど、やってみる」 - 第22回 麻雀企画集団 バビロン総帥 馬場裕一
「プロは『人が喜ぶ』」 - 第23回 点牌教室ボランティア 松下満百美
「やってあげてるという意識は無いほうがいい」 - 第24回 フリーアナウンサー 松本圭世
「高校野球中継のスタンド取材が今に生きています」 - 第25回 子供麻雀教室講師 山本健
「好きな言葉は、テンパイ即リー、数打ちゃ当たる!」