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ネマタの戦術本レビュー第484回「新版おしえて!科学する麻雀 著:とつげき東北 編:福地誠 その6」

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第1章 ポンにはを切れ!

 配牌でがトイツなら、大三元にならなくとも役牌2つにホンイツかトイトイかドラドラで満貫になるのですから、が出たら多くの打ち手がほとんどのケースで鳴くものと思われます。よって、がポンされてもをトイツで持っている確率が特別上がるとは言えません。

 とはいえ、序盤ならトイツで持たれている可能性がいくら低いと言っても、を切って大三元放銃はもちろん、ポンされたり小三元の単騎に放銃した時の損失も大きいのですから、おいそれと切ってよいものなのかは疑問が残ります。

( 参考:ブログ「とりあえず麻雀研究始めてみました」より「三元牌2つ仕掛けの残り1種類の行方」

 確かに序盤のうちにトイツで持たれている可能性は「低い」とは言えますし、鳴いた側にとっては最後の三元牌はできれば使いたい牌ですから巡目が深くになるにつれ重ねられる可能性も結構上昇しています。しかしながら、自分の手に最後の三元牌が1枚だけ浮いているという条件下であれば、5巡目であってもトイツで持たれている確率が約8%。損失の大きさを考慮すれば決して無視できるリスクとは言えないのではないでしょうか。(メンタンピンドラ1が狙えるなど)というのがどの程度の手牌を指すかは分かりませんが、テンパイなら勝負するとしても、「狙える程度の手」というだけなら止めた方がよいことも多いのではないでしょうか。パオがあって役満祝儀もあるフリー雀荘のルールであればなおさらです。(東風荘はパオ無し完全順位制なので、最後の三元牌を切るリスクが比較的低いというのも影響しているかもしれません。)

 もちろん、「だけは絶対に切らない」と決めつけて、を切らない時点で自分のアガリがかなり厳しいにもかかわらず安易にホンイツやトイトイの満貫手に放銃してしまうことはできれば避けるべきです。今回の例に限らず、「後々鳴かれたりロンされそうな牌を早めに切る」ことは後の押し引きを分かりやすくする効果もあります。

 ただし、そもそも通ったところでリターンに見合わないような手にもかかわらず、「今のうち」と危険牌を押してしまうミスはとりわけ初心者のうちによく見られます。収支戦だとしても得とは言い難いラス確和了も、やはり麻雀を打ち慣れていない初心者に多く見られます。

 勝敗を競う対戦型ゲームである以上、ルールによって認められている選択については、あくまでその打ち手にとって損か得かで判断すべきであり、「迷惑」「汚い」といった評価を持ち込むべきではないというのは確かです。しかしながら、麻雀は他の対戦型ゲームに比べてプレイ人口が極めて多いので、そもそも対戦型ゲーム全般に不慣れな打ち手も数多くいます。

 昨今の戦術書の内容を鵜呑みにするタイプの打ち手のことを「量産型デジタル」と呼ばれることがありますが、彼らには従来の麻雀観では「迷惑」「汚い」と評価されるであろう「損」な選択が多々見受けられるというのも事実です。私の勝手な推測ではありますが、そのような打ち手の多くが麻雀以外の対戦型ゲームについても経験が浅く、本にどうすべきであると書いてあるかは理解できても、何故そうすべきであると言えるのかについては理解が浅いのではないでしょうか。

 『科学する麻雀』は、「麻雀に限らず対戦型ゲームの経験がある程度ある」「麻雀は初心者レベルというほどではないが、『科学する麻雀』以前の麻雀観の影響を少なからず受けている」人が麻雀を学ぶうえでは最高の教科書であると個人的に思っています。私自身もそうでしたが、昨今の戦術書の著者で『科学する麻雀』の影響を受けた人の多くが該当しているのではないでしょうか。

 逆に言えば、そうではない人にいかに戦術を教えるかについては、もっとよいアプローチがあるのではないかとも思っています。そのアプローチを考えることこそ、私にとっての今後の大きな課題です。

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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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