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松ヶ瀬隆弥、オーディションで勝ち取った新境地「上手いではなく、強いを見せたい」(32)

松ヶ瀬隆弥、オーディションで勝ち取った新境地「上手いではなく、強いを見せたい」(32)

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 優勝=ドラフト指名。約170人のプロがしのぎを削った「EX風林火山ニューメンバーオーディション」において優勝し、己の力で堂々Mリーガー入りを果たしたのが松ヶ瀬隆弥プロ(RMU)だ。繊細な守備力を軸に、ここぞで役満を決める剛腕ぶりでドラフト指名権を勝ち取った男は、柔道二段、趣味は料理という側面も併せ持っている。その素顔とは?

なぜオーディションを受けたのですか?

「Mリーガーになれる最後のチャンスだなと思ったからです。勝てばMリーガーなんてチャンスはなかなか巡って来ない。そもそも枠が少ないので、ドラフト指名を待つだけでMリーガーになれるとは、ほぼほぼ思っていなかったので、だったら挑戦するしかないという気持ちでした」

己の力でMリーガー入りをつかみ取った「EX風林火山ニューメンバーオーディション」

 

オーディション中、どんなことを考えて対局されていましたか?

「予選に関しては約170分の6なので、運も相当必要だなと思いながら戦っていました。ただある程度のポイントを持てれば、勝ち上がり方というか戦い方を知っているはずなので、ちょっとだけ有利かなとは思っていました。さらに決勝メンバー4人まで勝ち上がれれば、大舞台で勝ち切った経験がある分、勝てるかどうかはわかりませんでしたが、だいぶ有利かなとは思っていました」

 

麻雀を始めたのはいつ頃ですか?

「覚えたのは小学校4年10歳の時。友達の家の麻雀牌で、みんなで入門書を読みながら覚えました。面白くてハマって中学校時代もその家に集まってやってましたね。高校に入ってからは部活が忙しく全然やらなくなってしまいました」

 

部活は何をやっていたのですか?

「小学校の時から野球と柔道を始めて、柔道は高校卒業までやってました。背負い投げがすごく好きで、五輪も世界大会も見ているんですが、素人目に見ても古賀稔彦選手(享年53)の背負い投げはすごく華麗でわかりやすくて、世界で一番強いのは古賀選手だという尊敬の念がありました。どれだけ努力をしてあそこまでいけたのか。僕自身も、ひとつのことを突き詰めるのがすごく好きなので本当に憧れの存在でした」

 

高校卒業後、プロ入りするまでの10年間は?

「高校を卒業してから調理師の専門学校に入学しました。でも正直、料理人になりたかったわけではなく、やりたいことがなかったから料理人になったという感じでした。卒業してからは札幌市内にあるホテルの料亭で働き始め、その後に居酒屋チェーン店の社員となり、厨房から新店舗立ち上げ等、29歳までの10年間、飲食の仕事に携わりました」

「麻雀プロになってからは、料理は趣味になりました。作っている時はすべて忘れられるほど集中します。なんでも作りますが、得意なのは魚料理。一匹さばいてお造りにしたり、綺麗に盛り付けるのが好きですね」

松ヶ瀬プロが作った二階堂瑠美プロの誕生日ケーキ。「時期的にイチゴがなかったんで、シャインマスカットをセレクトしました」とスポンジから焼き上げた

プロ入りを意識されたのはいつ頃でしたか?

「また麻雀やりたいなと思うようになったのは、22歳の頃でした。仕事が忙しかったので、麻雀店にはたまにしか行けなかったんですが、28歳の頃に麻雀熱に一気に火がついて、本格的にやってみたいなと思うようになり、プロ団体やプロテストの時期を調べ始めました。そしてプロ入りするなら北海道を出て、東京に行かなきゃいけないなと一念発起し、片っ端からプロテストを受けてみようと29歳の時に上京しました。根拠は何もないんですが、なんとかなりそうだなという思いだけでした」

 

「上京後、日本プロ麻雀協会のプロテストには落ちましたが、次に受けたRMUのプロテストに合格しました。実際には多井さん(多井隆晴プロ/渋谷ABEMAS)に拾ってもらったような感じだったと思いますね」

プロ入り後、どのように研鑽を積まれて来たのですか?

「麻雀プロして生きていくことを目標とし、麻雀に関わる仕事をずっとやっていこうと思って麻雀店で働いていました。一番多い月で600~700半荘。起きている時間はずっと麻雀を打っているという期間が2~3年続きました」

 

「プロ入り3年後となる2011年、自団体のクライマックスリーグで優勝してプロライセンスを取得できた時、プロとしてのスタート地点に立てたという感じでしたね」

 

「プロ入り後は単に打っているだけでよかったんですが、それだけではなかなか勉強にならないなと感じ始めていた頃、対局動画が配信されるようになったので、麻雀に関する勉強のやり方を変えました。打つことに費やしていた時間の半分を、見る時間に変えたのです。所属団体のリーグ戦はもちろん最高位戦日本プロ麻雀協会のAリーグもよく見ていましたが、中でも最も多く見ていた対局映像は、多井さんの対局でした」

 

「具体的には多井さんの手順を見ながら自分の中で沸いた疑問をピックアップし、なぜそうしたのかを自分で考えてから、本人に直接聞いていました。そうして自分の思考と多井さんの思考を比べて、いいところと悪いところを考えて、さらにその先にこういう局面が来たときに、どうなっていくのかをそれぞれの思考をベースにシミュレーションしていくという作業を繰り返し、蓄積していました。だから僕の基本的な麻雀は、勝手に見て覚えていったんですが、多井さんの麻雀がベースになっています」

連覇を狙うチーム内における自身の役割をどう捉えていますか?

「僕は結果を残すことがすべてなので、どうしたら勝てるのかということを日々考えています。Mリーグは32人という固定メンバーで戦うので、各選手の対局映像はMリーグだけではなく、各団体のリーグ戦やタイトル戦等、徹底的に見て研究しています。人それぞれ癖が必ずあるので、そこに気づけると自分にとっては武器になるからです」

 

「さらにチーム戦だからという選択はしないように意識しています。2016年に開催された第1回麻雀プロ団体日本一決定戦で、チーム戦の経験はあったんですが、結構難しく、個人戦だと好き勝手にできることがチーム戦だとできなくなったりするものだと感じていたので、Mリーグではあえて好き勝手に打つようにしています。シーズン終盤でなければ、一人の打ち手としてこの局面だったら自分はこうするという考えでいかないと戦えないかなと思っているからです」

初めてMリーグを見る人にどんなところを見てほしいですか?

「プロと名乗る以上、上手いではなく、強いを見せたい。それが一番わかりやすいのは、結果です。結果が出にくいゲームではあるんですけど、そこにこだわっていきたい。勝つことに対して執着するので、そこは見てほしいですね。やれることを最後までやって、どうしようもなくなった結果、ダメな時もあるんですけど、実は基本的にやれることを全部やり切れていないことの方が多いんですよね。そこを極限までやり尽くした後に負けるんだったら納得かなと。だから負けて納得したことは一度もないですね」

「強面とよく言われますが、特に気にしたことはありません。見た目の特徴があった方が覚えてもらいやすいんで、それはそれでいいことなのかな(笑)」

麻雀を通じて磨かれたことはありますか?

「対局中は対局相手はどうしたいのかなとか、こうしたらこうするのかなといったように相手の思考をよく考えるので、人の考えていることがよくわかるようになったと思います。それは実生活にも通じるので、コミュニケーションを築く上では、とても役立つゲームだと思います」

道産子Mリーガーは松ヶ瀬プロの他に茅森早香プロ、丸山奏子プロがいる。「地元北海道には、麻雀でいつか何かしら貢献したいですね」

松ヶ瀬隆弥(まつがせ たかや)プロフィール

生年月日:1980年4月11日
出身地:北海道札幌市
血液型:B型
所属団体:RMU
資格:柔道二段
勝負めし:肉
趣味:料理

松ヶ瀬隆弥 年表
年齢 主な出来事
1980 1歳 姉と弟がいる3人兄弟  
1990 10歳 麻雀を始める。小学校では野球部と柔道部に入り、柔道は高校卒業まで継続
1998 18歳 高校卒業後、調理師専門学校に入学
1999 19歳 調理師専門学校卒業。ホテルの料亭を経て、株式会社モンテローザに入社
2009 29歳 株式会社モンテローザ退社。RMUアスリートとしてプロ入り
2011 31歳 クライマックスリーグ優勝。RMUリーグ昇級
2012 32歳 第7期最高位戦Classic 優勝
2014 34歳 クライマックスリーグ 優勝
2016 36歳 第1回麻雀プロ団体日本一決定戦出場
後期クライマックスリーグ 優勝
2017 37歳 後期クライマックスリーグ 優勝
第9期令昭位
2018 38歳 RMUアワード最優秀選手受賞
2021 41歳 EX風林火山ニューメンバーオーディション優勝
EX風林火山よりドラフト指名を受ける

◎写真:佐田静香(麻雀ウォッチ) 、インタビュー構成:福山純生(雀聖アワー)

 

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