「初めてだと入りづらいし、なんだか怖い」。麻雀店に対する潜在的な先入観を持っている方は少なくない。友達同士ならまだしも、自分ひとりで知らない人と麻雀を打つなんて考えられない。そう思っている方は必読。あなたの麻雀店に対する考え方が変わるかもしれません。
1973年神奈川県生まれ。株式会社F・R・C代表取締役。学生麻雀連盟会長。好きな役は、あえて言えばリーチ。
〈声かけ〉から始まった麻雀店の斬新改革
いきいきした若いスタッフが「○○さんからリーチが入りました。頑張ってください!」「優勝は○○さん。おめでとうございます!」店中に響く元気なかけ声。ここは千葉県柏市の駅前にある〈麻雀ウェルカム柏店〉。経営しているのは、株式会社FRT代表取締役・香宗我部真さん。〈麻雀ウェルカム大船店〉も経営し、学生麻雀連盟の会長も務める等、多忙な日々を送っている。
今から25年前となる1990年頃。当時学生だった香宗我部さんは東京都町田市にある麻雀店で働いていた。
「当時の麻雀店には〈接客〉という概念がありませんでした。おしぼりを広げて出すなんてこともなかったし、お客さんに敬語を使うこともあまり見かけなかった(笑)」
「そんな中で、何気なく始まったのが〈声かけ〉だったんです。最初は私も気恥ずかしかったんですが、言われたお客さんはなんだか嬉しそう。そのうち店全体で〈声かけ〉を励行するようになり、お客さんの名前もどんどん覚えていきました。何カ月ぶりに遊びに来ても○○さんお久しぶりですね。帰り際に○○さん、あのテンパイはすごかったですね。こう言われたらお客さんも悪い気はしないんですよね」
当初このお店では、接客意識改革の他にも画期的な経営方針があった。それは18~20代前半という若い層をターゲットとしたこと。要するに学生でも楽しめる料金体系に設定したのだ。香宗我部さんがアルバイトしていたこの麻雀店は、〈接客サービス〉と〈若年層ターゲット〉の2つのコンセプトを柱にチームワークを向上し、現在全国に21店舗を展開する〈麻雀ウェルカムグループ〉の第1号店となった。
すべては現場スタッフの成長ありき
このアルバイト経験が、現在の香宗我部さんの根幹になっている。
「私が麻雀を始めたきっかけは、高校時代に彼女にフラれたこと。そのおかげで麻雀店でのアルバイトに没頭(笑)。卒業後、一時税理士を目指していたんです。でも経営者を支える税理士ではなく、やはり経営者になるべきではないかと漠然と思い初めていたちょうどその頃。麻雀ウェルカム1号店の店長から、ウチで社員としてやってみないかと声をかけてもらったんです。店長が〈働く人にとって将来の展望が見える会社にする〉と熱く語ってくれたことも、この道でやっていこうと決断出来た大きな要因でした」
「ただ私自身、店長が言っていた言葉の意味が本当にわかったのは7年前。経営者として独立し>てから、考え方がガラリと変わりました。会社の運営にともない、お金の運用方法を考える。そうしてお金をつきつめて考えてみると〈現場ありき〉だと行き着いたんです。お金は現場でしか生み出されない。現場でお金を生み出すためには、そこで働くスタッフが成長していかないと生まれない。スタッフは成長を実感出来ないと前には進めない。そして自分なりに考え抜いた結果、お客さん同士=学生同士の横の繋がりが必要だと感じ、学生麻雀連盟を立ち上げることにも結びついていったのです。こんな素晴らしいゲームをこそこそやったり、親に言えなかったりではなく、堂々と楽しんで欲しい。独立したばかりで資金的にも苦しかったのですが、麻雀部のある日本中の大学にその必要を伝えて回りました。趣味が多様化し、今のままでは将来的に麻雀をやる若い世代がいなくなってしまう。そんな危機感が自分の背中を押していたんだと思います」
〈作業〉を〈仕事〉に変える
「ただ麻雀を打つ。飲み物を変える。灰皿を変えるは単なる〈作業〉。これを〈仕事〉にしていく意識を持つことが大切だと考えています。灰皿を変えるにもタイミングがあるのです。とくにゲーム中のお客さんに対して何かしらのアクションをするわけですから、今話しかけないでくれという状況もあるわけです」
「店長のサポートを受けながら、気配りの行き届いた空間を作っていく。なんとなく居心地がいいなとお客さんが感じてくれたらいいのかなと。それが伝わっていると感じるのは、お客さんがお客さんに気を遣うような卓が出来れば、そこにはスタッフとお客さんとの信頼関係が築けているのかなと実感できます」
麻雀を通して社会と関わる
香宗我部さんがそうだったように、スタッフには将来に対してビジョンを持ち続けてほしいと語る。
「私のお店の場合。スタッフの採用基準は、麻雀技術そのものよりもコミュニケーションスキルを重要視しています。具体的に言えば勝ち負けに左右されず、気遣い気配りが出来そうな人。そのうえで、スタッフそれぞれの持ち味をいかしながら将来のビジョンに一歩でも近づけるようサポートしています」
「中高生が部活動で仲間意識が芽生え、生涯の友達が出来るのと同じように、スタッフ同士も一緒に何かを成し遂げる。そんなふうに、人生でひとつでも真剣になれるものがあればといいかなと。それが麻雀だったらホント嬉しいですね」
この仕事のおもしろいところは?
若い人たちと一緒に働けること。今42歳なんですけど、同世代よりも夢や可能性に溢れている人たちと働けるのは幸せだし、刺激になりますね。
好きな言葉は?
「継続は力なり。メジャーで活躍するイチローと同じ歳なんです。継続は力なりを体現している見本ですね」
香宗我部さんにとって麻雀とは?
「人生の哲学。調子がいいときはどうするのか。調子が悪いときはどう対処するのか。負け続けたときに人にあたらない。そんなことを教わっているのかもしれません」
インタビューを終えて
麻雀店を問わず、グループチェーン店というとマニュアル通りの無機質な対応や会話となりがちな昨今。そんな中で麻雀を通して、若い人に社会との関わりの場を提供している香宗我部さん。「麻雀店でスタッフとして1人前に接客できるようになれたら、飲食店でもなんでも起業出来ると思います。私の理想は〝八百屋さん〟であり続けたい。親しみやすいけど礼儀は外さない。そんな八百屋さんのような接客を目指しています」
現場スタッフの成長とチームワーク向上の先にある理想の追求。香宗我部さんのような方がいるかぎり、麻雀界の未来は明るい。
文責:福山純生(雀聖アワー)/写真:河下太郎(麻雀ウォッチ)
<店舗詳細>
麻雀ウェルカム柏店
千葉県柏市旭町1-1-1 K&Kビル7階
047-147-1192
〈フリー料金〉
1G/400円&1G/300円
〈セット料金〉
学生3~4名様の場合、下記いずれかを選べます。
・おひとり様120円(ドリンク最初の一杯サービス。10時間以上の御遊戯でフードサービス)
・おひとり様200円(フリードリンク。フードサービス付き)
学生1~2名様の場合。
・おひとり様200円(フリードリンク。フードサービス付き)
一般4名様の場合
・おひとり様300円(フリードリンク。フードサービス付き)
※学生様は、学生証の提示をお願い致します。
◎麻雀ウェルカムオフィシャルサイト
http://mahjong-welcome.com/
◎学生麻雀連盟オフィシャルサイト
http://www.gakusei-majan.com/
マージャンで生きる人たち back number
- 第1回 株式会社ウインライト 代表取締役社長 藤本勝寛
あらゆる挑戦は、すべて〝妄想〟から始まる - 第2回 株式会社F・R・C代表取締役 香宗我部真
<作業>が<仕事>に変わった先にあるもの - 第3回 ターナージャパン株式会社 制作部 プロデューサー 上島大右
好きなことを仕事にしようと考えるより、自分の仕事を好きになる努力するほうがいい - 第4回 フリーアナウンサー 土屋和彦
しゃべるのが仕事。しゃべることを取材することも仕事 - 第5回 株式会社セガ・インタラクティブ セガNET麻雀MJディレクター 高畑大輔
「マージャンのおかげでキレなくなりました(笑)」 - 第6回 RTD株式会社 代表取締役 張敏賢
「目指すは、新しいマージャン文化の創造」 - 第7回 漫画家 片山まさゆき
「盆面〈ぼんづら〉がいい人生。仕事も麻雀も。そうありたい」 - 第8回 株式会社アルバン 専務取締役 船越千幸
「奪い合うのではなく、増えるきっかけを生み出す」 - 第9回 健康麻将ガラパゴス創業者 田島智裕
「参加者に喜ばれ、なおかつ社会的意義のあることをやり続けたい」 - 第10回 株式会社日本アミューズメントサービス代表 高橋常幸
「希望が持てる業界を構築し、麻雀で社会を変えたい」 - 第11回 《More》プロデューサー 菊池伸城
「躊躇なく一気にやることで、世界は開ける」 - 第12回 麻雀キャスター 小林未沙
「想像力をどれだけ膨らませられるかが勝負です」 - 第13回 麻雀評論家 梶本琢程
「面白かったら続けたらいい。うまくいかなかったら次を考えたらいい」 - 第14回 麻雀AI開発者 水上直紀
「常識を疑い、固定概念を崩したい。強くなるために」 - 第15回 麻雀観戦記者 鈴木聡一郎
「ニュースがライバル。そう思って書いてます」 - 第16回 株式会社サイバーエージェント AbemaTVカンパニー編成部プロデューサー 塚本泰隆
「決断したことに後悔はしない。麻雀から学んだ思考です」 - 第17回 劇画原作者 来賀友志
「麻雀劇画の基本は〝負けの美学〟だと思っています」 - 第18回 株式会社シグナルトーク代表取締役 栢孝文
「始める、続ける、大きく育てる。愛する麻雀の“弱点”を補うために」 - 第19回 フリーライター 福地誠
「まだ本になったことがない新テーマの本を作りたい」 - 第20回 声優 小山剛志
「もがき、あがき、考える日々。一体いつまで続けられるのか」 - 第21回 映画監督 小沼雄一
「大変だけど、やってみる」 - 第22回 麻雀企画集団 バビロン総帥 馬場裕一
「プロは『人が喜ぶ』」 - 第23回 点牌教室ボランティア 松下満百美
「やってあげてるという意識は無いほうがいい」 - 第24回 フリーアナウンサー 松本圭世
「高校野球中継のスタンド取材が今に生きています」 - 第25回 子供麻雀教室講師 山本健
「好きな言葉は、テンパイ即リー、数打ちゃ当たる!」