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フリーアナウンサー 梅中悠介 「まずはやってみたほうがいい」【マージャンで生きる人たち 第26回】

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麻雀最強戦で忘れられないエピソードは?

「今でも忘れられない失敗なんですが、2017年の全国アマチュア最強位の決勝戦です。オーラスで四暗刻をアガれば逆転トップというシーンだったんですが、残り枚数をカウントミスしてしまい、無い牌をあるように喋ってしまったんです。選手にとっては最大の見せ場なのに、喋り方も盛り上げ方も、実況の構造自体が変わってしまいました」


「それまでは残り枚数を数える時は手牌から数えて、河を数えていたんですが、この失敗以降、より確実性を増すために河から数え始めるようにしています。そしてこれまでの実況を見直し、意識して喋る量を増やす等、新たな実況方法にもトライしています。何かをしながら見てくれている人も多いので、例えば仕掛けただけではなく、何を仕掛け、アガれば何点みたいに目の前で起きている事象に関する付帯情報を増やすイメージです。麻雀を見て楽しむ人が増えてきた以上、対局番組を見る視聴者のレベル差も様々なので、情報は多いに越したことはないと思っています」

「麻雀最強戦2019からは、各選手がリーチや仕掛けをした時に、対局画面にリーチデータと副露(フーロ)データが表示されるようになったので、様々な角度から楽しんで頂ければ幸いです(※画面表示は、麻雀最強戦2011~2018までの8年分の集計データ)」

 

取材はどのようにされているのでしょうか?

「各プロ達のSNS等をチェックしています。ブログやツイッターを使って様々な情報を発信してくれているので、そこで得た情報に関しては現場で裏づけを取るという形です。自分で見聞きして集めた情報も含め、これまで取材で貯めてきた情報は資料として、年度ごとにストックしています」

「また語彙力を増やすためには、いろんなものを見ることが大事だと思います。とくにSNSの発達で新しい言葉も生み出されていくので、そこから言葉を取り入れたほうが、視聴者との距離が近くなる気がしています」


「最近はアルファベット化されることも多く、たとえば瀬戸熊直樹プロ(日本プロ麻雀連盟)が爆発的に連荘する時の代名詞として言われる“クマクマタイム”が“KKT”、Mリーグで萩原聖人プロ(日本プロ麻雀連盟)が作られたキーワード“雷電の麻雀は面白いんです!”が“RMO”。こういったように新しい言葉が生まれるのもひとつの文化です」


「ちなみに麻雀最強戦から生まれた言葉は、番組の司会を担当されている声優の小山剛志さんが実況を担当されていた時に生まれた“豊後無双”。豊後葵プロ(日本プロ麻雀協会)が国士無双をアガるなど特大トップを取った時に出来た言葉です。このように、今後どんな新しい言葉が生み出されるのか、私自身も楽しみにしています」

4人の手牌と天カメを見ながら番組を進行していく実況席。足元にはペットボトルのお水。「声が出にくくならないために、実況中は水をこまめに飲むよう気をつけています」

 

麻雀と日常がリンクすることはありますか?

「“いい時”と“悪い時”が必ずあるところがリンクしていると思います。仕事も麻雀も常にいいと常に悪いがありません。だから悪い時にどれだけ頑張れるか。頑張れるかというか、粘れるのか、耐えられるのかという感覚に近いかもしれません。やめるのは簡単ですが、やめるとゼロになってしまう。なかなか成果が上がらない時に、どれだけ粘り強く頑張れるのか。だからこそ仕事も麻雀も、一喜一憂せずに落ち着いてやることが大事だと思っています」

 

“喋ること”を仕事にされたい方へ

「喋りは人に聞いて頂くものなので、時間をかけてでも滑舌を良くすることが重要です。とくに私の場合は、最初に滑舌で躓いて遅れを取ってしまったので痛感しています。滑舌を良くするためには、正しい音の出し方を体の構造的に理解し、きちんとトレーニングすればなんとかなります。本も出ていますし、ボイストレーニングの学校もあります。オススメなのは自分の声を録音して、人に聞いてもらうこと。声の出し方と音の出方を客観的に知ることが出来ます」


「仮に滑舌が苦手だとしても、その弱点から目を逸らさない。そして何より自分がやりたい仕事とは違う仕事であったとしても、まずはやってみたほうがいいと思います」


「私も競馬実況がやりたくてこの世界に飛び込んだのですが、そうなるまでには時間がかかりました。大分朝日放送では報道記者からスタートし、新潟総合テレビで競馬実況をやらせて頂けるようになりましたが、競馬実況だけでなく、報道もスポーツもニュース番組もやってきたことが経験値として役に立ち、今につながっています」

「座右の銘は“果報は寝て待て”。座右の銘は、毎年置かれている環境で変わるんですが(笑)」

 

梅中さんにとって麻雀とは?

「私にとっては、無限に広がる可能性を秘めたコミュニケーションツールです。卓を囲むためには自分以外に3人必要となるわけで、その中からどういう人とのつながりや関係が出来ていくのかはわかりません。わからないということは、可能性が無限大に広がっていることなんだと思うんです。だから誰と打てるのかは、いつもとても楽しみなんです」

 

インタビューを終えて

 喋り手がその競技に対してどういう姿勢で関わり、そしてどれほどの愛情を抱いているのか、視聴者は敏感だ。
 2019年1月にアナウンサー歴16年目を迎えた梅中さん。もともとスポーツ観戦が大好きとのことだが「私の場合は興味がなければ喋れないという部分があります」と真摯に受け止め、綿密な取材を積み重ね、喋れるジャンルを増やされてきた。
 その満ち溢れる“麻雀愛”は滑らかな喋りとなって、視聴者に確実に届いている。

写真:佐田静香(麻雀ウォッチ) インタビュー・文責:福山純生(雀聖アワー)

 

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