AIに開発者の思いや嗜好は反映されるものなんでしょうか?
「もちろん反映されます。自分の使っている定石だけをインプットすれば、そこに特化することになります。ただ私の場合は、決めつけないことを意識しています。麻雀はシンプルにしてしまえば、いくらでも決めつけて出来てしまいます。要するに決めつける方が楽なわけです。たとえばテンパイしたら即リーチなのか否か。リーチ条件を列挙してインプットするのは簡単です。でも内容の濃いシミュレーションを増やし、その上でリーチするのか否かを、多角的に判断させたい。テンパイした段階で手変わりを待つのか否か、押すのか、引くのか等。あらゆる状況に合わせて、賢い判断が出来る環境を整えてあげることが私の役割です」

メンタル面はどう捉えているんでしょうか?
「同卓してくれた天鳳プレイヤーからは、判断スピードが一定でとにかく早いと言われたことがあります。相手が3副露していても瞬時の打牌選択スピードは変わりません。相手から見れば迷いがないと感じるわけで、メンタルが強いというより、常に一定です(笑)」
「終始一貫して手牌と盤面を状況判断したうえでの選択を繰り返すので、今まで常識とされてきたことが間違っていたと気づかせてくれる部分はあります。前例や常識、相性や先入観などに左右されることは一切無いので、固定概念に捉われることもありません。いろんな可能性があるんだよということを『爆打』が冷静に教えてくれているんだと思います」
『爆打』の行き着く先とは?
「麻雀に解はあるのか? それをずっと問い続けています。4人ゲームなので相手は3人。手牌も山牌も見えない中、一打一打が自分にとって正解なのかどうかは常にわからないわけです。お互いが死力を尽くして最大限マイナスにならないように対局することもあれば、自分より弱いターゲットを見つけて徹底的に狙うことも考え方としてはあるわけです。相手が自分より強い場合は、徹底的に守ってミスを減らすことを強さとも言えます。でも相手に合わせて打つのは、対戦者の情報がある程度わからないと対策が立てられません。将来的には相手のデータをわかったうえで戦えたら面白いですね。何十年かかるんだって話ですが」
「ただ試行回数だけで言えば人間は月200局、頑張っても年間2400局。『爆打』は24時間フルに打てば月に1500局、年間1万8千局打てます。ここから得られる結果をベースに、将来的には『爆打』が打ち手の指針になっていけたら、活用法は広がると思います。『爆打』何切るみたいになっていけたら面白いですね」
水上さんにとって麻雀AIとは?
「そもそも私自身が麻雀好き。強くなって勝率を上げたい。だから、わからないことは強い人に聞きたい。でも身近に強い人がいたとしても、毎局毎局聞けるわけではありません。でも選択した一打が、正着打だったのかどうかだけでも知りたい。その疑問を『爆打』が解決してくれる存在になってくれたらと願っています。最近の『爆打』は、間違いなく私より結果を出しています。嬉しい反面、認めたくはないのですが(笑)」

インタビューを終えて
「最初はなんでそんな打ち方するんだと、イライラしたこともありました」と語る水上さん。しかし開発から2年目以降、『爆打』はあきらかな進化を見せ、人間が間違いやすいことを教えてくれている実感があるという。麻雀AI『爆打』vs人間。『爆打』が日々積み重ね続けている膨大なビッグデータを読み解いていけば、人間の先入観や固定概念を修正してくれる可能性はとてつもなく大きい。そのビッグデータを分析し、どう活用していくのか。それを考えるのは、人間であることも紛れもない事実だ。
インタビュー・文責:福山純生(雀聖アワー) 写真:河下太郎(麻雀王国)
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しゃべるのが仕事。しゃべることを取材することも仕事 - 第5回 株式会社セガ・インタラクティブ セガNET麻雀MJディレクター 高畑大輔
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