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ネマタの戦術本レビュー第196回「進化するデジタル麻雀 著:石橋伸洋 その3」

ネマタの戦術本レビュー第196回「進化するデジタル麻雀 著:石橋伸洋 その3」

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例題5

 ダマでも役有り高打点の手でリーチするかについても意見の分かれるところですが、ダマで満貫以下の手で巡目が十分にあるとなると、他家が降りるとしても局収支のうえではリーチが勝ります。ツモや裏ドラで更に高い手になるメリットが案外大きいためです。ただしリーチの方が圧倒的に有利と言えるケースも少ないので、良形変化が豊富にある場合はダマにするのが無難です。

 今回は手変わりが無く、オーソドックスな収支戦であればトップ目とはいえまだ素点を稼ぐメリットが十分にある点数状況なのでリーチが有力そうです。ただ、一般論として、「ダマでも出にくいからなおさらリーチ」と言えるかは疑問です。理由については、「もっと勝つための現代麻雀技術論」第6回でも取り上げましたが、ダマなら出やすい牌はリーチして他家が降りてもツモれることが多く、ダマでも出にくいといっても他家がアガリを目指しているのであればそのうちこぼれることが多いためです。

 このあたりは難しい判断ですが、戦績に影響を与えやすい内容であることも確かなので、今後実戦問題等を通して突き詰めていきたいところです。

例題6

 今回の手牌であれば、高めイーペーコーのリャンメンテンパイが、ツモりサンアンコのシャボと比べても劣らないので、受け入れを狭めてまでサンアンコを残すことはありません。似たような手牌でも

なら、受け入れ最大の打よりは、ツモで確定サンアンコになる高打点になる受け入れを優先して打とします。

 今回の手牌ならドラ無しでもそもそもサンアンコは見ずに打とするのもあり、「メンゼンでドラ1あればとにかく最速手順」というのは、まずは分かりやすい基準を押さえる必要があるとはいえ、これもそのまま適用できないことが多いセオリーと言えます。ドラ1あれば最速というのはあくまで遠い手変わりをみるくらいならシャンテン数が進む受け入れ重視ということであり、受け入れ同士の比較であれば、ドラ1あっても、待ちはそのままでより高打点になる受け入れを残すに越したことはないのではないでしょうか。

 打としてをポンするかについてですが、今回は高めイーペーコーがあり、ドラ1あるのでドラ0の場合よりリーチによる打点上昇のメリットが若干大きいので、「もっと勝つための現代麻雀技術論」第101回の高め2つ三色よりはスルー寄り、高め1つ三色よりは鳴き寄りというところ。現在6巡目なのですぐが出た場合はスルー、もう少し遅れたら鳴いてテンパイ取りでしょうか。 

 西家がをポンしてドラを切っているのでテンパイの可能性が高いというのはありますが、テンパイだとしても安手の可能性が高いため、安手でアガリを蹴るメリットが大きくないので今回は判断自体にはさほど影響しないと考えます。

 もちろん鳴き手が高打点の可能性が高いケース、こちらが鳴いてもまずまずの打点が見込める等アガリ自体の価値が高い場合は、他家の手が早そうかどうかは鳴き判断に大きな影響を与えるので、鳴きの分岐点を考える時は単に巡目だけでなく他家の動向を見ること自体は重要です。

本記事に関するご紹介

前著「黒いデジタル麻雀」で概念的に説明された戦術論を具体的な局面に落とし込んで解説しています。41の例題が収録されていますが、それらは決して単なる何切る問題ではなく、何を切り、何を考えておくべきかを問うています。ハイレベルになった現代麻雀において勝ち続けるにはここまで深く考えなければいけないのかと驚かされます。
 
石橋 伸洋 (著)
発売日:2016年10月26日
定価:本体1,490円+税
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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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