最高位戦日本プロ麻雀協会が主催する、プロアマ混合のオープンタイトル戦。それが發王戦(りゅうおうせん)だ。第29期を制した仲林圭プロ(協会)が發王位の肩書きを引っ提げてMリーグ入りを果たしたのは記憶に新しい。また第28期の決勝ではMリーガー3人による熾烈な争いが繰り広げられるなど、發王戦の注目度は高まる一方だ。今回は、そんな發王戦の魅力に迫ってみよう。
發王戦とは
發王戦のタイトルが創設されたのは1992年。最高位戦日本プロ麻雀協会では団体名にもその名を冠する「最高位戦」が歴史、格式ともに頂点に君臨しているが、發王戦はそれに次ぐ歴史を誇っている。現在では参加人数がプロアマ合わせて1000人規模というビッグタイトルとなった。ちなみにを「りゅう」と読むのは、麻雀牌のの正式名称「緑發(りゅうは)」から来ていると考えられているようだ。
大会のシステム
發王戦では本選に入るとトーナメント方式が採用される。それぞれのラウンドでは同一メンバーによって規定数の対局(1~4回戦は2半荘、5回戦~準決勝は3半荘)が行われ、上位2人が次のラウンドに進むという方式だ。そのため、「1人〇半荘でポイント上位〇人が勝ち上がり」という標準的な大会形式とは異なり、負ければ終わりの緊迫した条件戦が楽しめる。
各団体のタイトルホルダーには大会序盤の対局が免除されるシード権が与えられ、各団体における成績上位者にも予選免除などの権利が付与される。予選はプロ、一般ともに用意されており、オンライン麻雀ゲーム「天鳳」を使っての予選も行われている。
發王戦のルール
發王戦では、主催団体である最高位戦のルールが適用される。最高位戦ルールで特徴的なのは、30000点持ちの30000点返しで「オカ」がないことだ。順位ウマ(1位30000点・2位10000点・3位-10000点・4位-30000点)はあるがオカがない分、Mリーグルールなどに比べるとトップのポイントが抑えられる。裏を返せば、誰が勝つのか最後までわからない戦いが楽しめるということだ。最高位戦ルールのポイントは次の通り。
- クイタンあり・先付けあり
- 一発、裏ドラ、槓ドラ、槓裏 すべてあり
- オーラスで親の「アガリやめ」「テンパイや」は不可
- パオ(責任払い)なし
- 数え役満はなし、役満は複合しない
- 国士無双の暗槓アガリはできない
發王戦の歴代優勝者
西暦 |
期別 |
優勝者 |
優勝回数 |
1992年 |
第1期 |
田中 英知 |
初 |
1993年 |
第2期 |
新津 潔 |
初 |
1994年 |
第3期 |
伊東 一 |
初 |
1995年 |
第4期 |
原 浩明 |
初 |
1996年 |
第5期 |
原 浩明 |
2 |
1997年 |
第6期 |
伊藤 優孝 |
初 |
1998年 |
第7期 |
伊藤 優孝 |
2 |
1999年 |
第8期 |
土井 泰昭 |
初 |
2000年 |
第9期 |
佐々木 慶太 |
初 |
2001年 |
第10期 |
吉田 幸雄 |
初 |
2002年 |
第11期 |
菊池 俊幸 |
初 |
2003年 |
第12期 |
菊池 俊幸 |
2 |
2004年 |
第13期 |
藤中 慎一郎 |
初 |
2005年 |
第14期 |
瀬戸熊 直樹 |
初 |
2006年 |
第15期 |
竹内 孝之 |
初 |
2007年 |
第16期 |
石野 豊 |
初 |
2008年 |
第17期 |
水巻 渉 |
初 |
2009年 |
第18期 |
土井 泰昭 |
2 |
2010年 |
第19期 |
石橋 伸洋 |
初 |
2011年 |
第20期 |
佐藤 聖誠 |
初 |
2012年 |
第21期 |
佐藤 聖誠 |
2 |
2013年 |
第22期 |
水巻 渉 |
2 |
2014年 |
第23期 |
水巻 渉 |
3 |
2015年 |
第24期 |
中嶋 和正 |
初 |
2016年 |
第25期 |
松本 吉弘 |
初 |
2017年 |
第26期 |
石野 豊 |
2 |
2018年 |
第27期 |
中嶋 和正 |
2 |
2019年 |
第28期 |
白鳥 翔 |
初 |
2021年 |
第29期 |
仲林 圭 |
初 |
プロアマ混合で、所属団体も問わないオープンタイトルである發王戦。それだけに、歴代發王位はバラエティーに富んだ顔ぶれだ。主催の最高位戦のほか、連盟、協会、RMU、麻将連合と各団体を代表する強豪プロが名を連ねている。前年の發王位は準々決勝からの登場となることもあって、2連覇を果たしているのはこれまでに5人。3連覇は誰も達成していないが、唯一3期にわたって發王位に輝いているのが水巻渉プロ(最高位戦)である。
發王戦での名場面
發王戦の決勝は半荘5回の短期決戦で行われる。しかもオカなしの最高位戦ルール。最終5回戦を迎えても全員に優勝のチャンスが残る混戦となることも少なくない。それでは、近年の決勝戦で繰り広げられた名場面について見ていこう。
【第29期・仲林圭】最下位からの大逆転
全5回戦のうち、4回戦終了時点では最下位に沈んでいた仲林プロ。序盤からアガリを重ね、逆転も視界に入った中で迎えた南2局の親番。逃げ切りを図る長谷川来輝プロ(最高位戦)が役なしリーチで先制するも、招待選手の張敏賢さんと仲林プロにオリる気配はない。張さんは「ホンイツ・一気通貫」のダマテンに構え、ドラ3の仲林プロもテンパイ即リーチ。そして長谷川プロが恐る恐る捨てたが仲林プロに直撃。一発とタンヤオがついて18000点を加えた仲林プロ。これが大逆転への決定打となった。
【第25期・松本吉弘】若きエースが押し切る
最終戦の南3局、親の松本吉弘(協会)プロの前には多くの積み棒。トータルトップに立ち迎えた6本場だったが、攻撃の手を緩めることはなかった。2着目の村上淳プロ(最高位戦)がを暗カン後に、ドラのを切ってリーチ。これに対しを対子にしていた松本プロは、安全牌を2枚確保するよりも自らのアガリを信じてポン。その後は危険牌もプッシュして、4600オールのアガリを決めた。松本プロはこの優勝で協会の若手エースとしての地位を固め、翌年に行われたMリーグドラフトで指名を受けるのだった。
【第28期・白鳥翔】Mリーガー3人の激戦を制す
Mリーガー3人に矢島学 (協会)プロで争われた決勝は「最終戦の勝者が優勝」という大激戦となった。熱い戦いを象徴していたのが南2局2本場。カンでリーチした白鳥翔プロ(連盟)に対し、トップ目に立っていた矢島プロはの変則3面待ちでテンパイ。そして園田賢プロ(最高位)から切られたが、牌を倒したのは白鳥プロだった。頭ハネで矢島プロの進撃を止めた白鳥プロはその後トップとなり、最後は瀬戸熊直樹プロ(連盟)の追撃もかわして見事に優勝を果たしたのだった。
發王戦から生まれる「旬のスター」に期待しよう!
今回は注目のタイトル戦「發王戦」について紹介してきた。發王戦を制した松本吉弘、仲林圭の両プロがMリーガーとなったように「旬のスター」を輩出できるのがトーナメント戦の魅力である。これからもMリーガーを出し続けるのか、アマチュアからの優勝者は出るのかなど、次回以降の發王戦の行方にも目が離せない。