麻雀の中でも特に珍しい役であり、最も点数の高い役でもあるのが役満だ。その難易度からなかなかお目にかかれず、一発逆転を決めることもある役満は見ているだけでも興奮を覚えることだろう。そして、プロ雀士らは時に珍しい役を見事に成就させ、信じられない対局をファンに披露してくれる。この記事では珍しい役で勝負が決まった対局や、奇跡のような役満が炸裂した対局をご紹介しよう。なかなか見ることができないレアなアガリがぎっしり詰まった内容となっている。
珍しい役でアガリ!
二盃口
二盃口は、同種同順の順子を2組作る一盃口をさらにもう1組作る役だ。3翻だが門前役であることもあって難易度は非常に高く、滅多に完成しない役である。Mリーグでは2020のレギュラーシーズン2021年1月7日に、茅森早香がMリーグ史上初となる二盃口アガリを達成した。
トップで迎えた南三局、茅森は7巡目で七対子の一向聴を迎えるがそこからもツモを伸ばし、二盃口の聴牌に仕上げる。待ちのダマテンで様子をうかがうと見事ライバルから高めのを討ち取ることに成功し、平和・タンヤオ・二盃口・ドラ3の16000点アガリを見せた。
対局動画はコチラから↓
https://www.youtube.com/watch?v=UQhUFtvz3wU
清一色 VS 四暗刻
清一色は手牌が一種類の数牌で染まる美しい役。そして四暗刻は門前で刻子を4つ揃えることが条件の、こちらも美しい役満だ。そんな大物手がぶつかる対局がMリーグ発足初年度の2018年12月20日に繰り広げられた。
近藤が一人大きく沈んで親となったオーラス、配牌には索子が8枚。序盤から鳴き仕掛けで清一色に向かう近藤の姿を対面で見ながら四暗刻を育てるのは2着の瀬戸熊直樹だ。的確な打牌で暗刻を3つ揃えると待ちで逆転の望みをかけたリーチを宣言し、場には緊張が走る。しかし、清一色をテンパイしていた近藤はこれに臆さず危険牌のドラを勝負。これを見事に通した近藤が、をツモって勝負あり。パブリックビューイング会場で多くの観客が見守ったこの対局は、真っ直ぐと清一色を追い求めた近藤が制したのだった。
役満
国士無双
麻雀を知らない方でも「国士無双」というワードは耳にしたことがあるのではないだろうか。役満のひとつである国士無双は全ての1・9・字牌を1枚ずつ揃え、そのうちのどれかを対子にすると完成する役である。2022年6月5日の「麻雀最強戦2022Mリーグスペシャルマッチ」において、岡田紗佳がこの国士無双を13面待ちでアガるという偉業を成し遂げた。
前局で勝負手を白鳥翔にかわされ、闘志に火が付いた岡田の国士無双アガリだ。東三局、岡田は九種九牌だった配牌から国士無双を目指す。既に2枚切れていたも順調にツモり、有効牌をどんどん引き入れると、なんと1種も重ねることなく13面待ちの聴牌を迎える。ライバルを止めるリーチをかけると、を討ち取ることに成功。人生初の国士無双13面待ちをアガった岡田は見事最強戦ファイナルに駒を進めたのだった。
緑一色
緑一色はのみで手牌を緑に染め上げる、美しい役満だ。使える牌が少なく他家から鳴ける可能性が低い牌もあるため、非常に難易度の高い役満である。日本プロ麻雀連盟が主催する第42期王位戦の決勝最終戦において、この緑一色のアガリが注目を集めた。
日本プロ麻雀連盟所属の樋口徹がタイトルをかけた最終戦で劇的な緑一色を決めたのがこちらの対局だ。親番もなく順位も4着で迎えた南三局、配牌ではが対子だがは1枚ずつと、まだまだ緑一色が見えるとは言い難い状況。しかし、樋口は序盤からとを連続でツモり、なんと4巡目にして緑一色に必要な牌を5対子揃える。を鳴いた樋口は、その後は自らのツモでを引き入れて暗刻にするとをツモり緑一色を完成させた。驚きの逆転役満をアガった樋口は見事、第42期王位戦で優勝を飾ったのだった。
大三元
大三元は三元牌を全て刻子で揃えると成立する役満で、麻雀好きなら一度はアガってみたい憧れの役満のひとつだろう。Mリーグでは滝沢和典、前原雄大、近藤誠一、朝倉康心が大三元をアガっている。
朝倉プロが2020年6月18日に大三元をアガった対局がこちら。南一局、リードを広げていた朝倉プロは親番を迎え、が対子で入るという好配牌に実況も大興奮。とポンをすることに成功し、残すはを揃えるのみの状況となった朝倉プロ。残るツモ番もあと2回というところで見事をツモり、大三元完成。16000オールで圧倒的トップに立ったこの日の勝利は、2019シーズンのPiratesの優勝に大きく貢献する一戦となった。
清老頭
清老頭は1・9牌のみで4面子と雀頭を揃える役満で、その難しさは役満の中でも最高レベルのものである。RTDリーグ2018のセミファイナルにおいて、鈴木たろうがこの清老頭を鳴き1回のみで揃えるという奇跡が起きた。
鈴木たろうがレア中のレアともいわれる清老頭をアガった対局がこちら。配牌から暗刻、が対子のたろうは序盤からを鳴き、清老頭に向かう。まさかこんな大物手が育っているとは思いもしないトップの佐々木寿人は好調に聴牌しリーチをかける。しかし、当然のごとく猛プッシュを続けるたろう。アガリを手にするのは果たしてどちらなのか。緊張の1局はたろうが自らの手でアガリ牌をツモり、清老頭を見事に成就。4着から一挙にトップに躍り出る結果となった。
九蓮宝燈
九蓮宝燈は1種類の数牌で1・9を3枚ずつ、2~8を1枚ずつに加えていずれか1枚を雀頭にする、といった超難度の形を門前で揃える伝説とも称される役満だ。門前役であるため非常に難易度が高く、九蓮宝燈をアガると一生分の運を使い果たして死ぬ、といわれるのは有名な都市伝説だろう。そんな役満を信じられないスピードでアガった伝説の雀士が小島武夫氏だ。
ミスター麻雀こと小島武夫氏が誰もが驚く九蓮宝燈を魅せた対局がこちらだ。2着で迎えたオーラス、小島は配牌で8枚だった萬子をどんどん引き入れ、なんと7巡目であっという間に九蓮宝燈の聴牌となる。実況がまさかと戸惑っている間に次のツモ番、小島の右手にあったのはまさに九蓮宝燈を決めるであった。あまりにも鮮やかで完璧な九蓮宝燈に、実況・解説も驚きを隠すことなくこの伝説のアガリを称賛するのだった。
ダブル役満
字一色・小四喜
ただでさえ珍しい役満、それが2つ同時に達成するアガリをダブル役満という。字牌のみで手牌を揃える字一色と、風牌のうち3種を面子にして残りのを1種を雀頭にする小四喜。この2つの条件を満たしたアガリを見せたのは、なんと女優の浅香唯さんだ。
麻雀プロを目指す浅香唯さんが自身のYouTubeチャンネル「浅香唯メロウエイジ」に麻雀プロを招いて対局を行うという企画で、その奇跡は起きた。多井隆晴プロらが競技麻雀の作法をレクチャーしながら進めていた対局で、浅香さんはまずをポン。和やかなムードの中で静かにを暗刻にする。その後をポンすることにも成功し、終盤になって字一色・小四喜の聴牌となる。直後、小林剛がを切り、まさかの放銃。ダブル役満の完成に一同が驚愕することとなった。そんな浅香唯さんは2022年8月、日本プロ麻雀協会の試験に合格。プロ雀士としての輝かしい活躍が約束されているかのようなダブル役満和了だった。
奇跡の一局をその目で見よう
本記事では珍しい役での名勝負を中心に、プロが魅せた麻雀の世界をご紹介した。いずれも目が離せなくなるような対局で、ファンの記憶に残るものばかりだ。これらの珍しい役をアガるには、繰り返し対局を行うことが必須条件だ。これらの役に出会える日を夢見ながら、日々麻雀を楽しんで気長に続けることが珍しい役に出会うための秘訣といえるだろう。