《More》が表現していきたいこととは?
「私がマージャンをする人たちとの会話の中で個人的にすごくイヤだなと思っているのが、マージャンが弱い=バカ、ダメ。マージャンが強い=偉い。そういう叩き方をするのが心底イヤでした。プロだから結果を求められるのは当然なのかもしれませんが、結果だけではなく、その過程における個性など、多角的なマージャンの良さや楽しみ方があることは伝えたいと思っていたんです。要するに、表現者としての女流プログループの構築です。したがってオーディションでは、強い弱いの基準が曖昧な雀力は重視していません。一番大事にしたのは〝人間力〟です。歌唱審査もしましたが、それよりも受け答えがしっかり出来て、よく笑う明るさを持っている子を採用しました。また歌えない、踊れない子達が年内(実質3カ月以内)にデビューするためには何が必要なのか。そこを突き詰めていくと、作曲家をはじめ、メンバーを支えるスタッフ陣が一流であることが、1日も早いデビューにつながると考え、そこに予算を投資していきました。厳しいダンスレッスンやボイストレーニングは、結果として、マージャンにも活きるとは思うのですが、すぐに活きなくても、コツコツ積み上げていくことは何かしらに活きるのではないかなとは思っています。ボイストレーニングは呼吸法からやっていますので、マージャンの発声にも活きるかもしれませんが(笑)」
1stシングルに込めた想いとは?
「作詞家には、マージャン用語は一切使わずに、女流プロという職業にまつわる想いや気持ちを曲に込めて欲しいというオーダーをしました。特別な世界で生きていると思われるかもしれませんが、普通の女の子と変わらないんだよというのが1stシングルの『Just One Girl』。そこにマージャンらしさを加えるために、導入には中国音階を入れてもらいました。それをJポップにアレンジするので、気づかない人が多いとは思うのですが、気づく人は気づいてくれたのかなと思います。セカンドシングルは、一曲目とはガラッと変えて、AKBの作詞をしている丸谷マナブさんに、大人の夏の恋をコンセプトに作詞をお願いしました」
「ただ何よりも、1stシングルを手売りにしたことに、大きなこだわりがありました。通常、地下アイドルがデビューするまでには長い道のりがあるものなんです。今で言えば、AKBのカバー、ももクロのカバーに始まり、お客さんが定着してきてやっとライブで100人ぐらいは集まってくれるようになって初めて、オリジナルソングを作曲してもらえて、たとえそれがどうしようもない曲だったとしても、それでも一生懸命に歌い続けて、それからメジャーデビューへというステップがあるものなんです。そういった踏むべきステップを飛ばして、いきなりオリジナルデビューだったので、一曲目はあえて手売りにしたんです。いきなりiTunesで配信、タワーレコードでも売ってますでは、本来であれば、駆け出しがやるべき下積みを飛ばしている分、ちょっと感じ悪いなと。それで1枚1枚手売りで頭を下げて、買ってくれた人にはサインをしてというファンとの交流スペースになれるようにと秋葉原にオープンしたのが『MoreStage』だったんです。歌やダンスに込められた想いを、心の底から表現するためにも、そういうステップは大切にしようとこだわりました」
仕事上で気をつけていることとは?
「忙しくなればなるほど、ピリピリするタイプなので、そういう時ほど、言葉や態度にはとても気をつけています。Moreのメンバーは女流プロありきなので、アーティスト活動ありきというスタンスになってしまうと、様々な企画が立ち上がる中で、かける言葉も『しっかりやれよ』ではなく『しっかりやろうね』という言葉が適切なのかなと、自分に言い聞かせています」
今後《More》が目指す理想形とは?
「ZEPP東京でライブをやって、マージャンを知らない人がお客さんに来てもらって、マージャンを知らない人がマージャングッズを買ってくれて。More自体の知名度を広げながら、そういった広がりを持てたらいいなと思っています。幸いにもAbemaTVなど露出する機会も広がっているので、Moreに入って頑張れば、そういった先駆者にもなれるし、大好きなマージャンもいっぱい打てる。そんな環境を整えていきたいと思っています。その道中でグループとして大きく育っていってくれたら嬉しいですね」
菊池さんがマージャンを覚えたきっかけ
「地元で遊んでいる年上の遊び仲間がいて、23、24歳の頃に誘われて始めました。最初はゲームセンターにあるMJで、先輩が付きっきりで教えてくれました。飲めり込むタイプなので、あっという間に覚え、ひとりで雀荘にも行くようになりました。多い時で月に400半荘ぐらいは打っていましたね。その雀荘によくいたのが、永世最高位の故・飯田正人プロでした。あまりにも私がよくいるので、声をかけてくれて話しをするようになり、私のコンサートにも来てくれるようになりました。お亡くなりになる前に、私の誕生日に色紙を書いてくださったんです。『君の前途は明るい。己を信じて生きていこう』。今思えばマージャン界で何かやりたいと思うきっかけを作ってくれた人だったかもしれません。音楽とマージャンを結びつけることは、人生をかけてマージャンをやっていた飯田さんへの恩返しにしていけたらと願っています」
これからこの業界を目指す人へのアドバイス
「やりたいと思ったことは、躊躇せずに、いっきにやることです。マジシャンをやっていたので、イメージできれば具現化できることは体感していました。だからイメージできたら、ためらわずにいっきにやってしまうことです」
菊池さんにとって麻雀とは
「マージャンはメンタルゲームなので、私自身、メンタルが崩れると打牌も変わってしまいます。常にぶれない心を持つことが強さだと思っています。私にとってマージャンは、メンタル維持のツールでもあり、コミュニケーションを広げてくれたツール。私は心が乱れたり、にっちもさっちも行かなくなった時には、携帯の電源を切ってマージャンに集中しています(笑)。その瞬間はすごく救われている気がします」
インタビューを終えて
「こうなったらいいな」「こんなことできたらおもしろいな」。仕事も遊びも、願望や理想形を思い描くことは誰にでも出来るが、実際に行動する人は少ない。マジックで学んだイメージの具現化をベースに、音楽とマージャンの融合を目指す《More》。思考と行動が一致する菊池プロデューサーのスピード感あふれる次の一手が楽しみで仕方がない。
文責:福山純生(雀聖アワー) 写真:河下太郎(麻雀ウオッチ)
◎Moreオフィシャルサイト
http://more-stage.net
◎オフィシャルファンスペース『MoreStage』
◎Moreセカンドシングル 『恋なんていらない』 2016.8.11リリース。
◎箏演奏グループ『和音』オフィシャルWEBサイト
http://kotototomoni.net
マージャンで生きる人たち back number
- 第1回 株式会社ウインライト 代表取締役社長 藤本勝寛
あらゆる挑戦は、すべて〝妄想〟から始まる - 第2回 株式会社F・R・C代表取締役 香宗我部真
<作業>が<仕事>に変わった先にあるもの - 第3回 ターナージャパン株式会社 制作部 プロデューサー 上島大右
好きなことを仕事にしようと考えるより、自分の仕事を好きになる努力するほうがいい - 第4回 フリーアナウンサー 土屋和彦
しゃべるのが仕事。しゃべることを取材することも仕事 - 第5回 株式会社セガ・インタラクティブ セガNET麻雀MJディレクター 高畑大輔
「マージャンのおかげでキレなくなりました(笑)」 - 第6回 RTD株式会社 代表取締役 張敏賢
「目指すは、新しいマージャン文化の創造」 - 第7回 漫画家 片山まさゆき
「盆面〈ぼんづら〉がいい人生。仕事も麻雀も。そうありたい」 - 第8回 株式会社アルバン 専務取締役 船越千幸
「奪い合うのではなく、増えるきっかけを生み出す」 - 第9回 健康麻将ガラパゴス創業者 田島智裕
「参加者に喜ばれ、なおかつ社会的意義のあることをやり続けたい」 - 第10回 株式会社日本アミューズメントサービス代表 高橋常幸
「希望が持てる業界を構築し、麻雀で社会を変えたい」 - 第11回 《More》プロデューサー 菊池伸城
「躊躇なく一気にやることで、世界は開ける」 - 第12回 麻雀キャスター 小林未沙
「想像力をどれだけ膨らませられるかが勝負です」 - 第13回 麻雀評論家 梶本琢程
「面白かったら続けたらいい。うまくいかなかったら次を考えたらいい」 - 第14回 麻雀AI開発者 水上直紀
「常識を疑い、固定概念を崩したい。強くなるために」 - 第15回 麻雀観戦記者 鈴木聡一郎
「ニュースがライバル。そう思って書いてます」 - 第16回 株式会社サイバーエージェント AbemaTVカンパニー編成部プロデューサー 塚本泰隆
「決断したことに後悔はしない。麻雀から学んだ思考です」 - 第17回 劇画原作者 来賀友志
「麻雀劇画の基本は〝負けの美学〟だと思っています」 - 第18回 株式会社シグナルトーク代表取締役 栢孝文
「始める、続ける、大きく育てる。愛する麻雀の“弱点”を補うために」 - 第19回 フリーライター 福地誠
「まだ本になったことがない新テーマの本を作りたい」 - 第20回 声優 小山剛志
「もがき、あがき、考える日々。一体いつまで続けられるのか」 - 第21回 映画監督 小沼雄一
「大変だけど、やってみる」 - 第22回 麻雀企画集団 バビロン総帥 馬場裕一
「プロは『人が喜ぶ』」 - 第23回 点牌教室ボランティア 松下満百美
「やってあげてるという意識は無いほうがいい」 - 第24回 フリーアナウンサー 松本圭世
「高校野球中継のスタンド取材が今に生きています」 - 第25回 子供麻雀教室講師 山本健
「好きな言葉は、テンパイ即リー、数打ちゃ当たる!」