週刊誌、月刊誌、季刊誌、フリーペーパー等。読者にとって有益な情報やエンターテインメントを発信し続けている雑誌。そのジャンルは、経済、ファッション、スポーツ、趣味の分野まで多岐にわたっている。現在刊行されている麻雀雑誌は『近代麻雀』と『麻雀界』の2誌。今回は元プロ雀士でもある『麻雀界』編集長・高橋常幸さんに話を聞いた。
高橋常幸(たかはし・つねゆき)プロフィール
1977年、宮城県生まれ。A型、乙女座。株式会社日本アミューズメントサービス代表。『麻雀界』編集長。日本大学理工学部卒。好きな役はチャンタ。
麻雀専門誌『麻雀界』のコンセプトとは?
「愛好家から業界への就職を目指す学生まで。あらゆる麻雀ファンに満足して頂ける誌面作りを心がけています。プロの世界だけでなく、雀荘業界、ゲーム業界、麻雀イベント等、専門誌ならではの視点から情報を取り入れ、それぞれを結びつけて大きな力にしたい。そんな思いで制作しています」
会社を立ち上げたきっかけは?
「日本プロ麻雀協会に所属していた2004年。27歳のときに同団体のプロ4人で『株式会社日本アミューズメントサービス』を立ち上げました。当時、日本プロ麻雀協会の代表だった土井泰昭さんが退会されたことがきっかけでした。土井さんの退会により、進行中だった様々な企画が宙に浮いてしまったんです。それでこの頃、事務局長をやっていた私が引き継ぐことになりまして」
「ただ会社を立ち上げてみたものの、レギュラー仕事は無い状態。それに我々だけでは情報が少ないので、まずは業界で仕事をされている方に挨拶に伺いました。最初に伺った方は、麻雀企画集団バビロン総帥、馬場裕一プロでした。馬場プロからは、編集の仕事をやってみてはとアドバイスを頂きました。さらに雑誌『麻雀四季報』の編集長を務めていた西野孝夫さんに挨拶に伺い、そのご縁で『麻雀四季報』のお手伝いをさせて頂くようになりました」
「馬場プロのアドバイスに基づき、出版社へ企画を持ち込みながら、麻雀の総合サイトも立ち上げました。サイトにはプロ団体や業界情報や動画や漫画の掲載等、とにかく色々なことを試しました。そして会社を立ち上げと同時に日本プロ麻雀協会が展開していたノーレート雀荘『雀王』の経営を引き継ぎ、麻雀と将棋ができる『雀将倶楽部』をオープンしました。正直給料を出せる状態ではなかったのですが、麻雀業界で生活できるための仕事を生み出そうと必死でした」
「ただ社員全員が麻雀プロなので、リーグ戦とイベント取材がぶつかると、リーグ戦が優先になっていました。そうなると、記事や企画よりもプロ活動が優先になってしまい、中途半端でした。したがってプロをやめ、編集として活動していくようになったのです。それからは、麻雀戦術書の編集や、麻雀最強戦の大会責任者など、麻雀関連の様々な仕事もさせて頂けるようになりました」
麻雀界創刊の経緯とは?
「私が学生の頃は『月刊プロ麻雀』という専門誌がありました。現在『麻雀界』編集主幹でもある西野孝夫さんが編集していた月刊誌です。残念ながらこの雑誌は、2005年に休刊。その後『麻雀四季報』が創刊されました。四季報とはいえ、不定期刊行だったので、『麻雀四季報』のリニューアルをお手伝いさせて頂いたご縁で、西野さんに定期刊行化のご相談をしました。それで『麻雀四季報』を休刊し、隔月雑誌『麻雀界』として発売することになったのです。この発売を機に『麻雀界』編集長としてかかわるようになりました」
「この発売は大きな決断でした。定期刊行物にする以上、当たり前ですが締め切りがあります。業界誌としてのポジションも確立しなければなりません。取材記事や連載コラムなどの読み物も増やしましたが『麻雀四季報』と同価格でスタートを切りました」
「ただ当時は使命感というより、決断した以上、しょうがない。そんな感覚でした(笑)。その感覚から使命感が徐々に芽生えていきました。『麻雀界』は隔月スタートでしたが、2010年から月刊化。経営していたお店も『雀将倶楽部』から『ノーレート競技麻雀サロン 雀友倶楽部』という店名で秋葉原にオープンしました」
麻雀をはじめたきっかけ
「2001年。学生だった私は学生将棋界の幹事をやっていました。将棋熱が多少冷めた頃、たまたま学校の近くに日本プロ麻雀協会の道場『雀王』が目に入ったのです。元々麻雀には興味があったところ、プロ団体の道場であれば、きちっとしていると思い、通い始めたことが麻雀との出合いです。それからはあっという間に競技麻雀の虜になりました」
「ちょうどその頃、『日本プロ麻雀協会』が発足されました。雀王によく通っていた私は、同団体のプロテスト受験を勧められ受験したんです。プロ資格が取れたらいいなぐらいの気楽な気持ちでした。でも何よりも、プロとして食べていける団体を目指すというコンセプトに共感していたことが大きかったのだと思います。だから面接でも、打ち手としてどうこうというより、麻雀業界が食べていける世界になるために仕事をしていきたいと話しました。正直にいえば、そのとき考えていた大学の研究員も厳しそうだし、かといって普通のサラリーマンにはなる気がなかった。それなら麻雀業界という未知数の世界も面白いかなと。就活しないでなんとかやるには、この世界で頑張るしかない。そんな気持ちもありましたが(笑)」
高橋さんが果たしていきたい役割とは?
「将棋界では、タイトルをいくつか獲れば何千万円という世界。そういった世界を見てきたので、競技麻雀でタイトルを取って何十万円という世界を向上していくためには何が必要なのか。タイトル戦の価値を上げるためにはどうしたらいいのか。業界全体の環境向上とともに日々模索しています。2014年からスタートした『社会人麻雀団体対抗リーグ戦』もその一環です。おもしろいことをどんどん仕掛けていくことがメディアの使命。将棋の世界では、社会人団体対抗リーグ戦は何千人規模でやっているので、麻雀業界でも発展する可能性はあると思います」
「また2010年から、雀友倶楽部のある東京都千代田区の組合長となり、麻雀の幅広い普及を目指す全国麻雀業組合総連合会(全雀連)に加盟しました。組合活動に携わるようになると、それまで知らなかった業界の事情や、風営法を取り巻く環境をはじめ、業界が現状抱えている様々な問題を知ることになりました。実際、2011年に京都府警による雀荘摘発もありました。今後も環境の変化に機微に対応していかなければ、元も子もありません。麻雀の幅広い普及のためには、全国の麻雀店が活発に営業できる環境が必要になります。そのために政治家とのロビー活動も積極的に行い、よりよい環境作りを目指して意見交換を重ねています。組合員も高齢化しているので、若い世代がやっていかなければと感じています」
好きな言葉
「しょうがない。しかたがない。どうしようもない。この3ないですかね(笑)。使命感といえば、格好いいのですが(笑)」
これからこの業界を目指す人へ
「自分が打っても楽しいけど、それ以外にも楽しみ方は山のようにあるのが麻雀です。まだまだ未知数なので、これから入ってくる人にとっては、アイディアひとつで業界全体が変わるビッグチャンスがあると思います。麻雀を取り巻く法改正のように時間のかかる部分は私の方でやりますんで(笑)」
高橋さんにとって麻雀とは
「社会を変えられるツールです。麻雀はコミュニケーション、社会福祉、健康増進、経済活性化にもつながっていきます。麻雀ひとつで、社会に影響を及ぼすことができる。そんな力を兼ね備えた優れたツールです。だから麻雀が好きな経営者が多いのもわかる気がします」
インタビューを終えて
2020年の東京オリンピック開催に向け、カジノの合法化を柱とするIR法案がニュースになる昨今。麻雀を取り巻く社会環境も、刻々と好転していることは事実。ただ現状、解決すべき事象が山積みであることも事実。高橋さんが語るように、麻雀は社会を変えられる力を持つ素晴らしいゲームであるにもかかわらず、法的にはグレーゾーンのある部分も抱えている。この二律背反に正面から向き合い、希望が持てる業界を目指す高橋さん。今後ますます忙しくなることは間違いない。
文責:福山純生(雀聖アワー) 写真:河下太郎(麻雀ウオッチ)
◎麻雀界
http://www.mahjong-club.net
◎ノーレート競技麻雀サロン雀友倶楽部
http://janyu-kai.com/janyu-club/
マージャンで生きる人たち back number
- 第1回 株式会社ウインライト 代表取締役社長 藤本勝寛
あらゆる挑戦は、すべて〝妄想〟から始まる - 第2回 株式会社F・R・C代表取締役 香宗我部真
<作業>が<仕事>に変わった先にあるもの - 第3回 ターナージャパン株式会社 制作部 プロデューサー 上島大右
好きなことを仕事にしようと考えるより、自分の仕事を好きになる努力するほうがいい - 第4回 フリーアナウンサー 土屋和彦
しゃべるのが仕事。しゃべることを取材することも仕事 - 第5回 株式会社セガ・インタラクティブ セガNET麻雀MJディレクター 高畑大輔
「マージャンのおかげでキレなくなりました(笑)」 - 第6回 RTD株式会社 代表取締役 張敏賢
「目指すは、新しいマージャン文化の創造」 - 第7回 漫画家 片山まさゆき
「盆面〈ぼんづら〉がいい人生。仕事も麻雀も。そうありたい」 - 第8回 株式会社アルバン 専務取締役 船越千幸
「奪い合うのではなく、増えるきっかけを生み出す」 - 第9回 健康麻将ガラパゴス創業者 田島智裕
「参加者に喜ばれ、なおかつ社会的意義のあることをやり続けたい」 - 第10回 株式会社日本アミューズメントサービス代表 高橋常幸
「希望が持てる業界を構築し、麻雀で社会を変えたい」 - 第11回 《More》プロデューサー 菊池伸城
「躊躇なく一気にやることで、世界は開ける」 - 第12回 麻雀キャスター 小林未沙
「想像力をどれだけ膨らませられるかが勝負です」 - 第13回 麻雀評論家 梶本琢程
「面白かったら続けたらいい。うまくいかなかったら次を考えたらいい」 - 第14回 麻雀AI開発者 水上直紀
「常識を疑い、固定概念を崩したい。強くなるために」 - 第15回 麻雀観戦記者 鈴木聡一郎
「ニュースがライバル。そう思って書いてます」 - 第16回 株式会社サイバーエージェント AbemaTVカンパニー編成部プロデューサー 塚本泰隆
「決断したことに後悔はしない。麻雀から学んだ思考です」 - 第17回 劇画原作者 来賀友志
「麻雀劇画の基本は〝負けの美学〟だと思っています」 - 第18回 株式会社シグナルトーク代表取締役 栢孝文
「始める、続ける、大きく育てる。愛する麻雀の“弱点”を補うために」 - 第19回 フリーライター 福地誠
「まだ本になったことがない新テーマの本を作りたい」 - 第20回 声優 小山剛志
「もがき、あがき、考える日々。一体いつまで続けられるのか」 - 第21回 映画監督 小沼雄一
「大変だけど、やってみる」 - 第22回 麻雀企画集団 バビロン総帥 馬場裕一
「プロは『人が喜ぶ』」 - 第23回 点牌教室ボランティア 松下満百美
「やってあげてるという意識は無いほうがいい」 - 第24回 フリーアナウンサー 松本圭世
「高校野球中継のスタンド取材が今に生きています」 - 第25回 子供麻雀教室講師 山本健
「好きな言葉は、テンパイ即リー、数打ちゃ当たる!」